ワッセナー合意

ワッセナー合意とは

ワッセナー合意は、1982年11月24日にオランダで結ばれた重要な合意で、雇用者団体、労働組合、そして政府の三者の間で成立しました。この合意は、当時のオランダが直面していた失業率の増加と経済危機を乗り越えるための施策を盛り込んでいます。

背景

1970年代の石油ショックにより、オランダは天然ガスの大産出国であったため、豊かな資源を背景に国家財政を潤わせ、高水準の社会福祉制度を確立しました。その一方で、労働者の賃金は急激に上昇し、それが輸出での国際競争力を低下させる要因となりました。さらに、労働者賃金の上昇が企業側の雇用数を絞る結果となり、1980年代前半には失業率が14%に達しました。こうした経済状況は「オランダ病」と呼ばれ、深刻な不況を招きました。

合意内容

ワッセナー合意では、労使が次のような施策に合意しました。
1. 賃金の抑制と労働時間の短縮 - 長期的な視点から、賃金上昇のベースを抑えるとともに、労働時間を短縮することにより雇用を確保する。
2. 社会福祉制度の見直し - 社会保障支出を抑えることで企業の負担を軽減し、雇用維持を支援する。

また、この合意を受けて、労働条件におけるフルタイムとパートタイムの同一待遇が法律で定められ、労働時間の調整権も認められました。これにより、労働者は賃金を変えずに労働時間を延長または短縮する権利を持つことになります。

改革の成果

ワッセナー合意の施行により、オランダは1970年代末からの賃金と物価のスパイラルを抑制することに成功しました。この改革は「オランダ・モデル」または「ポルダー・モデル」と呼ばれ、特に労働市場において非常に重要な影響をもたらしました。その結果、経済成長率は回復し、失業率は14%から2001年には2.4%へと劇的に低下しました。特に、パートタイム労働者の割合が増え、2020年には雇用者の約36.9%がパートタイムで勤務するまでになりました。

労働市場の特色

オランダにおけるパートタイム労働は、単に労働時間を短縮するだけでなく、働き方の多様化を促進しました。近年では週4日や週3日勤務といった働き方が一般的となり、社会全体がこれを受け入れる土壌が形成されています。この状況は、公務員や教師など、さまざまな業種でも見受けられ、パートタイム労働者の存在が経済活動の一部として確立されつつあります。

まとめ

ワッセナー合意は、オランダの経済再生と雇用創出に向けた重要な政策として、国全体にわたって労働市場の新しいモデルを形成しました。その結果、オランダはパートタイム大国とも言われるようになり、働き方の多様性が実現しています。この合意の影響は、現在も続いており、国内外で注目される事例となっています。

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