ワトバーン・イブラーヒーム・ハサン

ワトバーン・イブラーヒーム・ハサン・アッ＝ティクリーティーの生涯

ワトバーン・イブラーヒーム・ハサン・アッ＝ティクリーティー（1952年 - 2015年）は、イラクの政治家であり、独裁者サッダーム・フセインの異父弟として知られています。彼は1952年にティクリート近郊のアウジャに生まれました。兄にサブアーウィーとバルザーンがいて、妻はフセインの第一夫人サージダの異母妹、イーラーム・ハイラッラー・ティルファーでした。

1970年代にティクリート県の知事を務め、政治的な野心を抱いていたワトバーンは、1983年に兄フセインとの確執から職を解かれました。その後、1990年代には大統領府の陳情係を務め、1991年には内務大臣に就任しました。内相としての行動は物議を醸し、特にシーア派住民に対する強硬な弾圧が問題視されることとなります。1993年には、バグダードで横行していた闇市の取り締まりを行い、多数の商店主を公開処刑した事例は特に知られています。

ワトバーンは、甥のウダイとの確執でも有名です。ウダイはワトバーンを攻撃する記事を書いた新聞を経営しており、二人の関係は険悪でした。1995年6月、ワトバーンは内相の職を失い、大統領顧問に任命されますが、実質的には左遷と見なされました。その後、宴席での紛争によりウダイによって銃撃され、重傷を負うことになるのです。

銃撃から1年後、ワトバーンはウダイが暗殺未遂事件に巻き込まれたときに訪問し、彼の重態を知って内心ほくそ笑んでいたとされています。政権末期に至るまで、ワトバーンは大統領顧問としての役割を果たさず、酒や娼婦に溺れる堕落した生活を送りました。

2003年のイラク戦争では、フセイン政権が崩壊し、ワトバーンはシリアへの亡命を計ろうとして拘束されました。その後、イラク特別法廷で「人道に対する罪」として起訴され、自己の無罪を主張しました。刑務所での生活は厳しく、最終的に2015年8月13日に獄死が確認されました。

政権崩壊後、彼の息子アフマド・ワトバーンはテロ活動に関与しているとされますが、未だ逮捕状は出ていない状況です。ワトバーンの人生は、フセイン政権の影響が色濃く、その周囲に起こった数々の事件に満ちています。彼の複雑な人間関係や政治的立場は、イラクの歴史を語る上で欠かせない要素です。

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