ワフー酋長

ワフー酋長について

「ワフー酋長」（Chief Wahoo）は、アメリカのプロ野球チーム、クリーブランド・インディアンスのマスコットであり、かつて戦争やスポーツにおけるインディアンの固定観念を象徴する存在でした。2018年まで使用されていたワフー酋長は、インディアンのステレオタイプなキャラクターとして問題視され、長年にわたり廃止要求が続けられました。

マスコットの歴史

このキャラクターは、オハイオ州クリーブランドに本拠を置くインディアンスが1915年にチーム名を「ナップス」から変更した際に採用されました。訂正後、チーム名とワフー酋長は物故したルイス・ソカレキスへの敬意を示すものとされました。ワフー酋長は、赤い顔に鷲鼻、垂れた目を持ち、赤いヘアバンドをつけた漫画的な表現であり、観客に向かってにやついた表情を見せることが特徴でした。1947年からユニフォームのデザインに採用され、以来球団のシンボルとして親しまれてきました。

廃止を求める声

「ワフー酋長」の使用に対しては、アメリカ先住民族の団体から強い反発がありました。「アメリカインディアン国民会議（NCAI）」や「全米黒人地位向上協会（NAACP）」は、このキャラクターが特定の民族を動物化しているとして、その廃止を求めました。1972年には、インディアン権利団体「アメリカインディアン運動（AIM）」の活動家ラッセル・ミーンズが球団に対して訴訟を起こし、ワフー酋長の使用に対する抗議デモを実施しました。彼はこれを「インディアン戦争」と位置づけ、抗議活動を続けました。

抗議運動の広がり

1992年には、全国組織「スポーツとメディアにおける人種差別の全国連合（NCRSM）」が結成され、インディアン運動家たちが連携して抗議活動を展開しました。1994年には新球場「ジェーコブス・フィールド」のオープンに合わせ、大規模なデモが行われました。抗議者たちは「ワフー酋長」のマスコット人形を焼くなどして意義を訴え、これがさらなる注目を集めました。市長が田舎のスポーツチームのロゴを市有財産から撤去することを提案した際、これもまた大きな反響を呼びました。

社会的な影響

「ワフー酋長」は、アメリカ先住民の文化を軽視しているとして、映画やドキュメンタリーの題材にもなりました。オハイオ大学で行われたシンポジウムで制作されたドキュメンタリー『WaWHO? Nothing is Sacred』では、インディアン活動家たちがワフーの意義や影響について語り、観客に対してこの問題の重要性を訴えました。監督は、「ワフー酋長はアメリカインディアンを非人間化しており、組織的な人種差別の象徴だ」と主張しました。

結論と今後の動き

2018年に、クリーブランド・インディアンスはワフー酋長のロゴの使用を中止することを発表しました。この決定は、長年にわたる抗議活動や廃止要求の結果として位置づけられています。ワフー酋長は、スポーツチームのマスコットが引き起こす文化的な課題について、広く考えるきっかけ提供となっています。今後、インディアンスが新しいマスコットを採用するにあたり、この背景を踏まえた配慮が求められることでしょう。

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