ワラワラ (ワシントン州)

ワラワラ（Walla Walla）は、アメリカ合衆国ワシントン州南部に位置する都市で、ワラワラ郡の行政の中心地です。オレゴン州との州境からわずか約10キロメートル、州都シアトルからは車でおよそ5時間の距離にあります。2020年の国勢調査によれば、その人口は3万4060人を数えます。肥沃な大地に恵まれたこの地域は、古くから農業が盛んであり、特に有名な特産品であるワラワラ・スイートオニオンは、全米にその名を知られています。近年は、ブドウ栽培に適した気候と土壌を活かしたワイン産業が急速に発展し、高品質なワインの産地としても注目を集めています。市にはワシントン州立刑務所も所在しており、地域の経済や社会において重要な役割を担っています。

都市の名称は、この地に暮らしていたネイティブアメリカンの一部族であるワラワラ族に由来すると考えられています。地理的には、北緯46度3分54秒、西経118度19秒49秒に位置し、総面積は約28.0平方キロメートルのうち、そのほとんどが陸地で構成されています。ワラワラ川が市内を流れ、やがて広大なコロンビア川へと注ぎます。

ワラワラの近代史は、1836年に宣教師マーカス・ホイットマンとその妻ナーシサがこの地に到着したことから始まります。彼らはワラワラ族へのキリスト教布教を試みましたが、白人入植者の増加とともに持ち込まれた伝染病が先住民の間で流行し、ホイットマンが入植者を優遇して治療を怠っているのではないかという疑念が生じました。この緊張関係は1847年11月29日の悲劇へとつながり、ホイットマン夫妻を含む14人の白人入植者がカイユース族によって殺害されました。この事件は、太平洋岸北西部におけるネイティブアメリカンと白人入植者との関係史における重要な転換点となりました。

その後、この地域への入植は続き、1859年から1860年にかけては、アメリカ陸軍のジョン・ムーラン大尉によって、ワラワラと現在のモンタナ州フォートベントンを結ぶ戦略的な軍事道路「ムーラン・ロード」が建設されました。都市としては、1862年1月11日に正式に設立されました。経済活動も活発化し、1869年にはワシントン州で最も古い歴史を持つベイカー・ボイヤー銀行が開業しました。1887年にはワシントン州立刑務所が設立され、地域の主要な雇用主の一つとなります。19世紀後半のゴールドラッシュ期には、その地理的な利点からワシントン州で最も規模の大きなコミュニティの一つに成長しましたが、その後は農業が主要な産業としての地位を確立しました。

現代のワラワラの経済は、伝統的な農業に加え、近年目覚ましい発展を遂げたワイン産業によって特徴づけられます。肥沃な土壌と理想的な気候は、特にカベルネ・ソーヴィニヨンやメルローといったブドウの栽培に適しており、多くの家族経営や小規模なワイナリーが設立されています。2006年夏にはその数が100を超え、生産されるワインは『Wine Spectator』や『The Wine Advocate』といった著名なワイン専門誌で高い評価を獲得し、世界中からワイン愛好家やバイヤーの注目を集めるようになりました。このワインブームは地域経済に活気をもたらし、市街地には洗練されたレストランやホテルが増加しました。歴史あるマーカス・ホイットマン・ホテルも改修され、街のシンボルの一つとなっています。ワイン産業が生み出す経済効果は年間100万USドル以上と推定されています。また、ワシントン州立刑務所も地域経済に大きく貢献しており、約1900人の収容者と約1000人のスタッフを抱え、多額の人件費が地域に還元されています。州は2018年に死刑を廃止しましたが、刑務所内にはかつて死刑執行に用いられた施設が残されています。将来的な施設の拡張計画も進行中です。

教育機関としては、名門リベラルアーツカレッジであるホイットマン・カレッジや、ワラワラ・コミュニティー・カレッジがあります。ワラワラ大学は隣接するカレッジプレイスに位置しています。交通インフラとしては、市内にワラワラ空港があり、アメリカ国道12号線が通っています。ワシントン州運輸局は、近隣のパスコ市との間を結ぶ高速道路の4車線化工事を進めており、地域の交通利便性の向上が期待されています。

国際交流としては、日本の兵庫県丹波篠山市と姉妹都市提携を結んでいます。ワラワラ出身の著名人としては、ソフトボール選手のエディ・フェイナーなどが挙げられます。また、アメリカのパンクバンド、オフスプリングの楽曲「Walla Walla」は、直接この街について歌ったものではありませんが、州立刑務所があることから、監獄を暗喩する言葉として使用されています。

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