ワルチング・マチルダ

ワルチング・マチルダ：オーストラリアを象徴する歌

「ワルチング・マチルダ」は、オーストラリアを代表する歌として世界的に知られています。非公式の国歌とも呼ばれ、オーストラリアのアイデンティティを象徴する存在として、広く親しまれています。

誕生の背景

1895年、ジャーナリストのバンジョー・パターソンが、あるキャトルステーションに滞在していた際、婚約者の友人であるクリスティーナ・マクファーソンが奏でるスコットランド民謡「Thou Bonnie Wood Of Craigielea」に感銘を受け、歌詞を書き下ろしたのが始まりとされています。

パターソンによる原詩は、その土地で起きた労働闘争をモチーフにしており、政治的なメッセージが込められていると言われています。また、サビの歌詞にはクリスティーナへの想いが込められているという説もあります。

しかし、この曲の発表後、パターソンはクリスティーナとの浮気が発覚し、婚約を解消。その後、彼はその地を去り、この曲について多くを語ることはありませんでした。この事実は、1971年にクリスティーナの手書き原稿が発見されたことで明らかになりました。

初披露と変遷

「ワルチング・マチルダ」が最初に披露されたのは、1895年4月6日、ノースグレゴリーホテルであるというのが定説です。ワルチング・マチルダ・センターの提案により、4月6日は記念日として制定されましたが、近年では異論も出ています。

1902年には、詞の権利が紅茶会社ビリー・ティーに譲渡され、1903年からコマーシャルソングとして使用されるようになりました。この際、ビリー・ティーの所有者の妻であるマリー・コウワンによって、歌詞と曲が書き改められ、現在広く知られているのはこのコウワンのバージョンです。歌詞に焚火缶を意味する「ビリー」が登場するのは、そのためです。

最初の録音は1926年、イングランド出身のテナー歌手ジョン・コリンソンによってロンドンで行われました。その後、1938年にはトーマス・ウッドがオーケストラ編曲を施し、バリトン歌手のピーター・ドーソンが歌ってヒットしました。

第二次世界大戦中には、多くの録音が行われ、米海兵隊第1師団が行進曲として採用しました。戦後も、バール・アイヴス、ハリー・ベラフォンテなど、多くのフォーク歌手によってカバーされています。

歌の意味と象徴

この歌は、羊泥棒の罪で追われた放浪者が、沼に飛び込んで自殺するという物語を描いています。「ワルチング」は「当てもなくさまよい歩く」という意味で、「マチルダ」は「寝袋」を指します。つまり、身寄りのない貧しい放浪者が、寝袋一つでオーストラリア大陸をさまよう姿を歌っているのです。

「ワルチング・マチルダ」は、オーストラリアの代名詞として、様々な場面で使用されています。例えば、サッカーオーストラリア女子代表は「マチルダズ」という愛称で呼ばれています。また、オーストラリアの国歌「アドヴァンス・[[オーストラリア・フェア]]」とともに、愛国的な歌として認識され、重要なイベントで演奏されています。アメリカ合衆国における「ゴッド・ブレス・アメリカ」のような位置づけと言えるでしょう。

関連作品

「ワルチング・マチルダ」は、様々なアーティストや作品に影響を与えています。エリック・ボーグルの「And the Band Played Waltzing Matilda」は、曲中に「ワルチング・マチルダ」の一節が織り込まれています。また、トム・ウェイツの「トム・トラバーツ・ブルース」でも、サビで同曲の一節が引用されています。

映画『渚にて』では、メインテーマとして繰り返し使用され、シミュレーションゲーム『シド・マイヤーズ シヴィライゼーションⅥ』では、オーストラリアのBGMのモチーフとして使われています。

日本のバンド、ザ50回転ズの「マチルダと旅を」は、「ワルチング・マチルダ」をサビに配置した楽曲です。

このように、「ワルチング・マチルダ」は、オーストラリアの文化を象徴する歌として、今もなお多くの人々に愛され、様々な形で受け継がれています。

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