ワンボードマイコン

ワンボードマイコンとは

ワンボードマイコンとは、一枚のプリント基板上にマイクロプロセッサ、メモリ、入出力インターフェースなどの必要最低限の電子部品を実装した、極めてシンプルなマイクロコンピュータです。初期のコンピュータが個人で利用できるようになった形態の一つであり、その後のパーソナルコンピュータの発展に大きな影響を与えました。

概要

ワンボードマイコンは、元々は評価用ボードとして開発されましたが、コンピュータが個人でホビーとして使えるようになった初期の形態として普及しました。その後、マイクロコンピュータはホームコンピュータやパーソナルコンピュータへと発展し、ワンボードマイコンは評価用や組み込み開発用ボードとしての役割に戻りました。しかし、21世紀に入ってからは、Arduinoのようなホビー向け製品が登場し、再び注目を集めています。また、シングルボードコンピュータと呼ばれる新しい形態も現れています。

仕様

ここでは、1970年代のワンボードマイコンについて解説します。製品は、組み立てキットと完成品のボードとして販売されていました。組み立てキットでは、購入者がはんだごてを使って部品を基板に取り付ける作業から始めました。電源ユニットも別売りが一般的で、自作する人も少なくありませんでした。また、ボード自体を設計、自作する人もいました。

入力機器としては、16進数キーパッドやアセンブリ言語のニーモニック入力に使用するキーが数個だけというものが一般的でした。東芝のEXシリーズでは、ON/OFFの二方向しかない単位スイッチが並んでおり、これらを操作して2進数を入力する機種もありました。出力機器としては、8桁程度の7セグメントLEDが標準で搭載されていました。ワンボードマイコンでプログラミングをしても、表示できるのは7セグメントLEDの数字の変化程度でしたが、工夫次第でプロペラのような図形を表示したり、ブロック崩しのようなゲームを作ったりするなど、限られた環境でも楽しむ試みがなされていました。汎用I/Oポートを備えた機種では、外付け回路を利用して様々な制御を試すこともできました。

より高度な入出力機能を実現するためには、キーボード、ディスプレイ、Tiny BASICやForthのようなプログラミング言語が必要となりますが、メーカーによってはこれらの拡張キットも販売していました。しかし、これらのキットもユーザーが自ら組み立てる必要があり、BASICを自作するユーザーもいました。

Arduino

Arduinoは、ワンボードマイコンの一つのカテゴリとして、安価でホビイスト向けに開発されました。PC上のスクリプト言語から制御できるという特徴を持ち、mbedのような開発環境がWeb上にあるタイプの製品も登場しています。

歴史

黎明期には、エンジニアや好事家が部品を調達してワンボードマイコンを設計・制作したり、評価キットやワンボードマイコンが小売店で販売される程度でした。1974年末に発売されたAltair 8800がヒットし、互換機も登場して普及しました。日本では、1975年にインテルの評価キットSDK-80が発売されました。これは、組み立てキットで、技術者に自ら組み立てさせることで教育効果を高めるという意図がありました。1976年には東芝から日本初のワンボードマイコンTLCS-12A EX-0が発売され、続いてNECのTK-80が登場しました。TK-80は当初、技術者向けの評価・教育用ツールでしたが、アマチュアにも人気となり、マイコンブームの火付け役となりました。しかし、1970年代後半には、より手軽に使えるパーソナルコンピュータが登場し、ホビーの主流はそちらに移りました。その後、2000年代に入り、ArduinoやRaspberry Piなどのシングルボードコンピュータが登場し、再び活況を呈しています。

主なメーカーと機種

以下に、1970年代に発売された主なワンボードマイコンとそのメーカーを記載します。

日本国外製品

Apple Computer - Apple I
モステクノロジー - KIM-1
Synertek - SYM-1
ロックウェル・インターナショナル - AIM-65
宏碁（エイサー） - マイクロ・プロフェッサー I
モトローラ - MEK6800D2
インテル - SDK-80, SDK-85
Microcomputer Associates, Incorporated - JOLT
シンクレア・リサーチ - MK14
Mostek - KIM-1, Evalution
フェアチャイルドセミコンダクター - F-8KIT 1A
IMSAI - IMSAI-8048
RCA - CDP18SO20
ナショナル・セミコンダクター - SC/MP
インターシル - サンプラー

日本国内製品

日本電気 - TK-80, TK-80E, TK-85
東芝 - EXシリーズ
日立 - H68/TR
富士通 - Lkit-8
三菱電機 - MELCS-8/2
パナファコム（PFU） - Lkit-16
ロジックシステムズ - MP-80
MTコーポレーション - PROTO-80
シャープ - MZ-40K
RAM - Λ-1
学研 - GMC-4

これらの製品は、初期のコンピュータ開発の歴史において重要な役割を果たしました。

参考文献

大内淳義『マイコン入門』廣済堂出版、1977年7月。
中沢真也『マイコン活用法』廣済堂出版、1977年12月。
安田寿明『マイ・コンピュータ入門―コンピュータはあなたにもつくれる』講談社、1977年3月。
安田寿明『手づくりコンピュータマイコンキット活用ブック』工業調査会、1977年8月。
安田寿明『マイ・コンピュータをつくる―組み立てのテクニック』講談社、1977年9月。
安田寿明『マイコンピュータをつかう―周辺機器と活用の実際』講談社、1978年4月。
榊正憲『復活! TK-80』アスキー、2000年3月。
『大人の科学マガジン Vol.24 特集：マイコンの時代』学研、2009年7月。

関連項目

Computer on Module
パーソナルコンピュータ史

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