ワード号事件

ワード号事件について

ワード号事件は、1941年12月7日（日本時間では12月8日）に発生した、真珠湾攻撃の前に日本海軍の特殊潜航艇がアメリカ海軍の駆逐艦「ワード」に攻撃し、撃沈に至った重要な出来事です。この事件は、その後の太平洋戦争の展開に大きく影響を与えるものであり、歴史的な背景を理解するためには欠かせません。

事件の経緯

事件が発生する前の1941年11月25日、アメリカのルーズベルト大統領は海軍大将キンメルに対し、日本からの攻撃の可能性を警告しました。これに対し、キンメル大将は、日本軍による奇襲の警戒指示を出し、敵対的行動があれば即座に攻撃するよう命じました。

12月7日、特殊潜航艇「甲標的」はアメリカの領海内、具体的にはハワイの真珠湾近くの航行制限区域に侵入しました。この時間、アメリカ海軍の駆逐艦「ワード」（艦長：ウィリアム・W・アウターブリッジ大尉）では、当直乗組員の交代が行われていました。午前4時8分、特設掃海艇「コンドル」からの報告で正体不明の潜水艦が発見されたとの連絡が入りますが、約30分後には続報が途絶えます。

その後、午前6時30分頃、ワードの乗組員は視界の中に不審な物体を見つけました。それは潜水艦の司令塔のように見え、急速に接近することが決定されます。60ノットで接近したワードは、午前6時45分に物体に対して射撃を開始しました。この攻撃により、特定の物体は沈没し、重油の流出が確認されました。これによりワードの乗組員は、攻撃に成功したと判断するも、公式にはその戦果が認められていない現状があります。

日本海軍の攻撃意図

特殊潜航艇がアメリカの領海内で航行していた事実は、その意図が攻撃にあったことを示唆しています。この航行制限区域では、アメリカ国籍を問わず潜水艦の潜航が禁じられていたため、特殊潜航艇は敵艦として扱われるべき存在でした。なお、もし攻撃が警告なしに行われても、国際法的には正当な防衛行為に当たるとされています。

ワード号はその後の午前6時53分に、真珠湾の太平洋艦隊司令部へ「潜水艦を攻撃した」と報告を行ったものの、平文への展開に手間取ったため、その情報は十分に活用されることなく遅延しました。この遅延のために、日本軍の奇襲を防ぐための重要な機会が失われました。

ワード号の運命

ワード号はその後、高速輸送艦に改装され、太平洋戦争に投入されました。しかし、1944年12月7日にはレイテ島攻略作戦中に日本軍特攻機の攻撃を受け、大破。最終的には僚艦の「オブライエン」により撃沈される運命を辿ります。興味深いことに、「オブライエン」の艦長は、当時ワード号の艦長だったウィリアム・W・アウターブリッジ少佐でした。このように、ワード号事件は事件そのものだけでなく、其の後の運命とも密接に関連しているのです。

結論

ワード号事件は、アメリカ海軍にとって不安の中での歴史的瞬間であり、その結果として日本軍の攻撃が引き起こされたことは、太平洋戦争の重大な転換点となりました。日本時間の奇襲までの時間、ワード号はその存在を最大限に活かしきれなかったといえます。この事件から学べることは、情報の伝達と警戒体制の重要性であり、未来に向けても教訓となる出来事でした。

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