ワールドボクシング

ワールドボクシング (World Boxing)

ワールドボクシング（World Boxing）は、アマチュアボクシング競技を国際的に統括する目的で設立された新しい国際競技連盟です。長年にわたり同競技を管轄してきた国際ボクシング協会（IBA）に代わる組織として誕生しました。IBAから離脱した各国の国内競技連盟によって組織され、国際オリンピック委員会（IOC）からも仮の承認を受けています。

設立の経緯

この新しい統括団体の設立には、前身である国際ボクシング協会（IBA）が抱えていた深刻な問題が背景にあります。IBAはかつてIOCファミリーの一員でしたが、ガバナンスの不備、運営の透明性の欠如、倫理規定への違反、そして特に不正判定に関する疑惑など、複数の問題が長期間にわたり指摘されていました。加えて、特定の国が組織運営に強い影響力を持っているとされる体制にも批判が集まりました。

これらの問題に対し、国際オリンピック委員会は厳しい姿勢を取りました。IBAは2019年と2022年の二度にわたってIOCから資格停止処分を受け、最終的にはIOCファミリーとしての資格を取り消されるに至りました。この状況は、オリンピック競技としてのボクシングの将来を危うくするものでした。

このような危機的な事態に対処し、アマチュアボクシング、特にオリンピックにおけるボクシング競技の地位を守るため、世界中の主要なアマチュアボクシング連盟が行動を起こしました。合計18カ国のアマチュアボクシング国内競技連盟が国際ボクシング協会からの離脱を決断し、新たな国際統括組織としてワールドボクシングを結成しました。団体の設立は2023年4月に公式に発表され、活動を開始しました。

各国連盟の動きと日本の対応

設立後、ワールドボクシングにはIBAに代わる組織として各国の連盟が加盟を進めています。日本においても、日本ボクシング連盟が2024年9月にワールドボクシングへの加盟手続きを完了しました。当初は国際ボクシング協会にも加盟しており重複した状態でしたが、2025年3月に2028年のロサンゼルスオリンピックでボクシング競技が実施されることが国際オリンピック委員会によって正式に承認されたことを受け、状況が変化しました。日本ボクシング連盟は、IBAからの脱退と、今後はワールドボクシングの単独加盟団体として活動していく方針を表明しました。この日本の決定は、ワールドボクシングがオリンピックとの連携を深め、アマチュアボクシング界の中心組織となりつつある現状を示す一例と言えます。

主催大会

ワールドボクシングは、設立後間もないながらも国際大会の主催に乗り出しています。2024年9月には、モンゴルのウランバートルで団体として初めて主催する国際大会である「ワールドボクシングカップ」を開催しました。これは、選手たちに国際舞台での競技機会を提供し、組織の活動を本格化させる重要な一歩となりました。今後、「ワールドボクシングチャンピオンシップ」など、主要な国際選手権大会も主催していくことが計画されています。

国際的な承認の進展

ワールドボクシングは、アマチュアボクシングの新しい国際統括団体として、国際スポーツ界からの正式な承認を得るためのプロセスを進めています。国際オリンピック委員会（IOC）は、2025年2月26日には、将来的なオリンピックにおけるアマチュアボクシングの管轄団体としてワールドボクシングを暫定的に承認する決定を下しました。これは、ワールドボクシングがIBAに代わる組織としてIOCから一定の評価を得たことを意味します。

さらに、IOC承認国際競技連盟連合（ARISF）の理事会も、IOCの決定を受けて、2025年3月10日にワールドボクシングの暫定加盟を全員一致で承認しました。ARISF総会での最終的な加盟決定は、同年下半期に行われる見通しです。そして、2025年3月17日には、IOC理事会において、2028年のロサンゼルスオリンピックでボクシング競技が正式に実施されることが承認されました。この決定は、オリンピック憲章に則ったクリーンな運営を目指すワールドボクシングの活動を後押しするものであり、オリンピックにおけるボクシングの存続を確保する上で、ワールドボクシングが中心的な役割を担っていくことを強く示唆しています。

ワールドボクシングは、過去の問題から学び、より透明性が高く、選手中心の運営体制を確立することを目指しており、今後のアマチュアボクシング界における主要な存在として期待されています。

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