ンガサウジャンの戦い

ンガサウジャンの戦い：モンゴルとパガン朝の最初の激突

1277年、モンゴル帝国とビルマのパガン朝の間で、歴史に名を刻む最初の戦闘が繰り広げられました。それが、ンガサウジャンの戦い（ンガサウジャンのたたかい）です。この戦いは、パガン朝王ナラティーハパテの行動と、モンゴル帝国皇帝クビライの決断が複雑に絡み合った結果、避けられない衝突として勃発しました。

戦いの発端：侮辱と報復

モンゴル帝国第5代カアンとなったクビライは、周辺諸国に対し服属と貢納を要求しました。しかし、パガン朝のナラティーハパテ王は、1271年と1273年の使節を、拒絶、さらには処刑するという侮辱的な行為に出ました。この挑発的な行動にもかかわらず、クビライは即座に軍事行動には移りませんでした。

しかし、ナラティーハパテ王は、元朝に内通していたタイ系の諸族を攻撃するという、危険な賭けに出ます。この行為が、クビライの怒りに火をつけ、雲南方面に駐屯していたモンゴル軍に、パガン軍への攻撃命令が下されることとなりました。

戦いの経過：戦象の恐怖と元軍の逆転劇

パガン軍は、その主力である戦象を率いて北上し、永昌付近でモンゴル軍と対峙しました。当初、モンゴル軍は密林を利用してパガン軍の攻撃をかわしていました。しかし、パガン軍が前線に戦象を配置したことにより、事態は急変します。

これまで戦象を見たことのないモンゴル騎兵たちは、巨大な動物に恐怖を覚え、隊列は混乱に陥りました。指揮官は、騎兵隊に下馬させ、遠距離から弓矢で戦象を攻撃するよう指示。鎧を着けていない戦象は、矢の雨に苦しみ、パニック状態に陥り、自軍や密林に突進、多くの歩兵を巻き込みながら戦場を離脱しました。

戦象が撤退した後、モンゴル軍は再び騎乗し、残されたパガン軍を圧倒的な力で打ち破りました。

戦いの結果とその後：未完成の征服

パガン軍は壊滅的な敗北を喫し、潰走しました。しかし、モンゴル軍の指揮官も負傷していたため、追撃は行われず、軍は雲南へ撤退しました。同年後半、モンゴル軍はパガンへ侵攻し、ビルマ北部のバモーを攻撃、駅伝の設置を試みましたが、現地での疫病の流行により、大都へ撤退せざるを得ませんでした。

この戦いで、クビライはビルマから献上された戦象を得て、自軍に戦象部隊を編成。後にナヤン・カダアンの乱では、クビライ自身も戦象に乗って戦場に出陣したと伝えられています。ンガサウジャンの戦いは、モンゴル帝国によるビルマ征服への序章であり、その後のビルマにおけるモンゴル帝国の軍事行動に大きな影響を与えました。

結論

ンガサウジャンの戦いは、モンゴル帝国とパガン朝という東西の強大な勢力間の最初の直接的な衝突でした。この戦いは、軍事技術や戦術の差異、そして予測不能な要素（戦象の恐怖など）が、戦いの結果を大きく左右することを示しています。また、この戦いは、後のモンゴルによるビルマ侵攻における重要な一歩であり、その後の両国の歴史に深い影を落としたと言えるでしょう。

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