ヴァイオリン協奏曲第2番 (バッハ)

ヴァイオリン協奏曲第2番ホ長調 BWV 1042

概要

ヨハン・ゼバスティアン・バッハが作曲した全3曲のヴァイオリン協奏曲のうちの一つであり、特に広く知られ、演奏される機会も多い人気の高い作品です。バッハのヴァイオリン協奏曲を代表する楽曲として知られています。

この協奏曲は、後にバッハ自身によってチェンバロ協奏曲第3番ニ長調 BWV 1054として編曲されています。ヴァイオリン協奏曲としての正確な成立時期は不明ですが、チェンバロ協奏曲版はおおよそ1717年から1723年の間に成立したと考えられています。

楽器編成

本作品の演奏に必要な楽器編成は以下の通りです。

ソロ・ヴァイオリン
弦楽合奏
バッソ・コンティヌオ

演奏時間

全曲を通しての演奏時間はおよそ17分です。各楽章はおおよそ以下の通りです。

第1楽章: 約8分
第2楽章: 約7分
第3楽章: 約2分

楽章構成

本作品は伝統的な3楽章構成（急-緩-急）をとっています。

第1楽章: Allegro

ホ長調、2/2拍子。
楽章は、力強く華やかなリトルネッロ（固定された主題）で開始されます。形式的には、リトルネッロ形式とダ・カーポ形式の要素が見事に融合した、バッハ独自の創意工夫が凝らされた構造を持っています。ソロ・ヴァイオリンは、リトルネッロ主題と巧みに対話しながら、時には技巧的なパッセージを披露し、時に歌謡的な旋律を奏でます。バッハの円熟した作曲技法が随所に示された、充実した楽章です。

第2楽章: Adagio e sempre piano

嬰ハ短調、3/4拍子。
深い情感を湛えた美しい緩徐楽章です。楽章の冒頭で低弦が提示する6小節の短い主題が、バッソ・オスティナート（執拗反復）として繰り返される上で、ヴァイオリン・ソロが豊かなカンティレーナ（長い息吹の旋律）を歌い上げます。オスティナート主題が織りなす安定した土台の上に、ソロ・ヴァイオリンが自由かつ情感豊かに旋律を乗せる対比が印象的です。「sempre piano」（常に弱く）の指示が、楽章全体の静謐で内省的な雰囲気を特徴づけています。本協奏曲の白眉とも言える楽章です。

第3楽章: Allegro assai

ホ長調、3/8拍子。
快速なテンポで、快活な雰囲気に満ちた終楽章です。形式は、明快なリトルネッロ形式が採用されています。16小節の明るいリトルネッロ主題が提示された後、これとほぼ同じ長さ（16小節）のソロ・エピソードが挿入されます。このリトルネッロとソロの交替が繰り返され、リトルネッロが合計4回現れます（うち最後の回は32小節に拡大されています）。軽快な3/8拍子は舞曲のリズムを思わせ、ヴァイオリン・ソロも華やかで技巧的なパッセージが豊富に含まれています。明るく躍動的な音楽によって、全曲が華々しく閉じられます。

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