オスティナート

オスティナート（Ostinato）とは

音楽におけるオスティナート（イタリア語: ostinato）とは、ある音楽的なパターンを、楽曲を通して何度も繰り返す技法を指します。イタリア語で「頑固な」「執拗な」という意味を持ち、日本語では「執拗音型」や「執拗反復」などと訳されることもあります。

オスティナートの類型

オスティナート技法は、リズムパターンのみを繰り返すものから、音程や和声を含めた音楽パターン全体を繰り返すものまで、様々な種類があります。

オスティナート・ベース（Basso Ostinato, 執拗低音）: 低音とその上の和声進行を、特定のリズムパターンとともに反復する技法。バロック音楽に多く見られます。
リズム・オスティナート: リズムパターンのみを繰り返す技法。グスターヴ・ホルストの組曲『惑星』の「火星」が代表例です。
和音オスティナート: 和音を反復するものの、和声的な機能を持たないもの。アントニオ・ソレールのファンダンゴや、フレデリック・ショパンの子守歌などが例として挙げられます。

また、バロック期のオスティナート・バスのように同じ低音主題が徹底して繰り返されるだけでなく、ある音楽的パターンが断続的に反復される場合もオスティナートとみなされることがあります。

オスティナートの歴史

「オスティナート」という言葉が音楽用語として初めて用いられたのは、1687年のアンジェロ・ベルナルディの著作であるとされています。ジョゼッフォ・ツァルリーノは同様の音楽的パターンを「pertinacie」と呼んでいました。

オスティナート技法はバロック期に最盛期を迎え、チャッコーナ、パッサカリア、フォリアといったオスティナート・バスに基づく作曲や即興演奏が広く行われました。これらのオスティナート・バスの多くは、スペイン、イタリア、南米の舞曲に起源を持ちます。イギリスでは、鍵盤楽器やリュートのために執拗低音を用いた「グラウンド」と呼ばれる楽曲が作られました。

バロック中期から後期にかけては、ルネサンス期の舞曲に由来する定型的なオスティナート・バスだけでなく、多様な低音パターンが用いられるようになりました。例えば、フランチェスコ・カヴァッリのオペラ『エリスメーナ』に見られるような、4度にわたるバスの半音階的下降進行は、悲しみや嘆きを表す場面で効果的に使用されました（ラメント・バス）。また、オスティナート・バスを用いた器楽曲や独奏曲は、「パッサカリア」や「シャコンヌ」と呼ばれるようになりました。

古典派やロマン派の時代にはオスティナートの使用例は減少しましたが、ベートーヴェンの交響曲第5番や第7番などで見ることができます。近代になると、モーリス・ラヴェルの「ボレロ」やドミートリイ・ショスタコーヴィチの「交響曲第7番」など、オスティナート技法が再び多用されるようになりました。

近現代音楽では、イーゴリ・ストラヴィンスキーの「春の祭典」、バルトーク・ベーラの「ミクロコスモス」、オリヴィエ・メシアンの「神の顕現の3つの小典礼」、伊福部昭の映画音楽「ゴジラのテーマ」など、数多くの楽曲でオスティナートが用いられています。20世紀後半のミニマル・ミュージックは、極端なオスティナートの典型例と言えるでしょう。

オスティナート技法の広がり

オスティナート技法は、民族音楽、ジャズ、ポピュラー音楽など、様々なジャンルにも広く見られます。ジャズにおけるブギウギやヴァンプなどが代表的な例です。

リフレイン: 楽曲の感情を表現するために、繰り返し演奏または歌われる部分。
* ヴァンプ: ブルース、ジャズ、ゴスペルなどで、繰り返し演奏または歌われる部分。

オスティナートは、音楽に推進力や一体感をもたらす重要な技法として、時代やジャンルを超えて活用されています。

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