ヴァルター・ウルブリヒト

ヴァルター・ウルブリヒト

ヴァルター・エルンスト・パウル・ウルブリヒト（Walter Ernst Paul Ulbricht）は、1893年6月30日にライプツィヒで生まれ、1973年8月1日に東ベルリンで死去したドイツの共産主義者及び政治家です。彼は1950年から1971年までドイツ社会主義統一党（SED）の第一書記を務め、1960年からは国家評議会議長として国家元首の地位にありました。ウルブリヒトは、ドイツ民主共和国（東ドイツ）の建国とその発展において中心的な役割を果たしました。

生い立ちと初期の活動

ウルブリヒトは、仕立て屋の家庭に生まれ、両親はドイツ社会民主党（SPD）の熱心な支持者でした。彼は小学校卒業後、指物師としての修行を始めると同時に、政治活動にも参加しました。第一次世界大戦に出征した後、彼は戦争に対する反対の意志から脱走し、逮捕・投獄されましたが、その後1918年に解放されました。

政治活動の軌跡

ウルブリヒトは、1912年にドイツ社会民主党に入党、その後1920年にドイツ共産党（KPD）に移籍しました。彼はモスクワの国際レーニン学校での教育を経て、1926年にはザクセン州の州議会議員に選出され、1933年には国会議員となりました。しかし、ナチスの台頭に伴い、彼は亡命を余儀なくされ、パリとプラハでの活動を経て1945年にソ連からの指示で占領下のドイツに戻ります。

東ドイツ建国

1949年10月、ソ連占領地区がドイツ民主共和国として成立し、ウルブリヒトはSEDの第一書記として政権を率いることになります。彼は経済の振興を図るために、農業集団化や国有化を進める政策を実施しました。しかし、これにより経済の混乱が引き起こされ、東ドイツの国民は生活水準が低下しました。特に、自営農民の西ドイツへの逃亡が問題となり、その対策として1961年にはベルリンの壁が建設されました。

政治的立場と外交

ウルブリヒトは、強硬なスターリン主義者として知られ、ソ連との関係改善を試みながらも、西ドイツとの協議を求める姿勢を持ち続けました。彼の政策は党内での対立を引き起こし、特に経済を効率化するための「新経済システム」導入に関しては賛否が分かれました。ウルブリヒトの政策は、経済の安定を図る一方で、党内外での対立を深める結果となりました。

晩年と評価

1971年、ウルブリヒトは健康上の理由で党の最高指導者の座を退くこととなりますが、国家評議会議長としての地位は維持しました。その後、彼は1973年に亡くなるまで東ドイツの政治に関与し続けましたが、彼の死後、彼を讃える名称や記念施設は短期間で改名されました。ウルブリヒトは、融通がきかず大衆からの支持を得ることが少なかったものの、政治経済を一定程度まで安定させた点では評価されています。彼の名は公式な歴史の中から次第に消えてしまいましたが、彼の影響は東ドイツの歴史の中で色濃く残っています。

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