ヴァルデマー3世 (デンマーク王)

ヴァルデマー3世の生涯

ヴァルデマー3世（またはヴァルデマール3世、Valdemar III, 1314年 - 1364年）は、中世デンマークとシュレースヴィヒ公国において重要な役割を果たした人物です。彼はデンマーク王としては1326年から1329年までの短期間しか在位しませんでしたが、シュレースヴィヒ公としては、1325年から1326年、そして1330年から亡くなる1364年まで長くその地位にありました。シュレースヴィヒ公としてはヴァルデマー5世と数えられます。

生い立ちと王位への道

ヴァルデマー3世は、シュレースヴィヒ公エーリク2世の息子として生まれました。彼の人生における最初の大きな転換期は、1326年に訪れます。当時、デンマーク王クリストファ2世は貴族や民衆からの支持を失っており、国内は混乱していました。その状況を利用し、ヴァルデマー3世の母方の伯父にあたるホルシュタイン＝レンズブルク伯ゲルハルト3世が、ヴァルデマー3世をクリストファ2世の対立王として擁立しました。こうして、ヴァルデマー3世は若くしてデンマーク王位に就くことになったのです。

デンマーク王としての苦難

しかし、ヴァルデマー3世のデンマーク王としての治世は、長くは続きませんでした。彼の王位は、ゲルハルト3世の権力によって支えられており、国内では彼のことを傀儡王と見る向きが強かったのです。そのため、彼の治世は貴族や平民による相次ぐ反乱に悩まされることになりました。結局、1329年には王位を追われ、クリストファ2世が復位することとなります。ヴァルデマー3世は、その短い在位期間で、デンマークの王としての基盤を築くことができませんでした。

シュレースヴィヒ公としての統治

デンマーク王位を失った後、ヴァルデマー3世はシュレースヴィヒ公としての統治に専念しました。彼はこの地位を、1325年から1326年、そして1330年から1364年まで、実質的に生涯にわたって維持することになります。シュレースヴィヒは、デンマークと神聖ローマ帝国との間に位置する戦略的に重要な地域であり、ヴァルデマー3世はここで、デンマークとの和睦や戦争を繰り返しながら、自らの権力を確立しようと努めました。彼の治世は、シュレースヴィヒ公国における権力基盤を強固にするための、複雑な政治的駆け引きの連続でした。

親族関係と政治的影響

ヴァルデマー3世の人生におけるもう一つの重要な側面は、親族関係がもたらす政治的な影響でした。彼の妹ヘルヴィは、1340年にデンマーク王ヴァルデマー4世と結婚しました。この結婚は、両国間の関係に影響を与え、和平交渉や外交戦略において重要な役割を果たしました。また、ヴァルデマー3世自身の家族構成も、シュレースヴィヒ公国や周辺地域における権力構造に影響を与えました。

家族

ヴァルデマー3世は、リヒャルディス・フォン・シュヴェリーンと結婚し、2人の子供をもうけました。

ヴァルデマー（1338年 - 1360年）：早世。
ヘンリク（1342年 - 1375年）：父の後を継ぎシュレースヴィヒ公となった。

参考文献

* 百瀬宏 他 『新版 世界各国史 21 北欧史』 山川出版社、1998年

ヴァルデマー3世は、デンマークの歴史において、短い王としての期間と、長いシュレースヴィヒ公としての期間という、対照的なキャリアを歩みました。彼の生涯は、中世北欧の政治的動乱と、複雑な親族関係が、個人の運命に深く影響を与えたことを示しています。

もう一度検索