シュレースヴィヒ公国

シュレースヴィヒ公国の歴史

シュレースヴィヒ公国（デンマーク語: Hertugdømmet Slesvig、ドイツ語: Herzogtum Schleswig）は、ユトランド半島南部に位置し、11世紀から19世紀にかけてデンマーク王国の一部として存在しました。この地域は現在、デンマークとドイツの国境によって二分されていますが、歴史的には重要な物資輸送ルートとしての役割を果たしていました。

紀元前から中世までの背景

シュレースヴィヒの地には古代ローマの記録により、ジュート人とアングル人が居住していたことが確認されています。中世の初めにはデーン人や北フリジア人、サクソン人がこの地域に住んでいました。14世紀にかけて、住民の多くはドイツ語を話すようになり、民族的な境界は大きな変動を見せることはありませんでした。

また、シュライ湾近くのヘーゼビューは、ヴァイキング時代にはスカンディナヴィア最大の交易拠点として栄えており、デンマーク王国に統合される過程でシュレースヴィヒ地方は重要な歴史的地域の一環として扱われました。

シュレースヴィヒ公国の成立

デンマーク王国の王位を巡る争いの中、南ユトランドの伯爵であったオーラフ1世によってシュレースヴィヒ公国が成立しました。後の時代にはアーベルがこの公国を引き継ぎ、その子孫はデンマークの王位も狙うことになります。このため、デンマーク王とシュレースヴィヒ公との間での権力争いが続きました。

シュレースヴィヒ公爵位は14世紀以降、ホルシュタイン伯に移り、オルデンブルク家に受け継がれることになります。この時期、シュレースヴィヒとホルシュタインの異なる主従関係が、後の民族間の対立の火種となっていきました。

19世紀の民族問題と戦争

19世紀に入ると、シュレースヴィヒ地域ではドイツとデンマークのナショナリズムが台頭し、シュレースヴィヒ＝ホルシュタイン問題が表面化しました。デンマークの国民自由党は、公国をデンマーク王国に併合しようとし、1848年には民族ドイツ人による反乱が起こります。

この反乱は第一次シュレースヴィヒ＝ホルシュタイン戦争を引き起こし、プロイセン軍との戦闘が展開されましたが、デンマークは一時的に勝利を収めることができました。しかし、その後の1864年には第二次シュレースヴィヒ＝ホルシュタイン戦争で再び苦しい結果となり、地域はプロイセンとオーストリアに占領されました。

20世紀の分断と最近の影響

第一次世界大戦後、地域の帰属を決めるため住民投票が実施され、1920年には北部シュレースヴィヒがデンマークに再編入される決定がなされました。一方で中部および南部シュレースヴィヒはドイツに残留しました。この結果、地域には新たな国境が形成されました。

その後、南シュレースヴィヒの住民の中には国籍を変更して「デンマーク人」と名乗る者もいましたが、これは新たに流入したドイツからの難民との関係から生じたものでした。

1955年のコペンハーゲン＝ボン宣言では、デンマークとドイツは互いのマイノリティを尊重することに合意しました。現在、旧シュレースヴィヒ公国の地域は2つの国に分かれていますが、ヨーロッパ連合による共同体としての結束が見られています。

このようにシュレースヴィヒ公国の歴史は、複雑な民族的、政治的背景を持ち、今なお両国の関係に影響を与えています。

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