ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ

ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ（Valeria Bruni Tedeschi）は、1964年11月16日にイタリアで生を受けた、多才な芸術家です。主にフランスで活動を展開しており、女優としてのみならず、映画監督としてもその才能を発揮しています。彼女の名前は、ヴァレリア・ブルーニ＝テデスキのようにクレジットされることもあります。

彼女の故郷はイタリア北部の都市、トリノです。芸術的な環境で育ち、父は作曲家のアルベルト・ブルーニ・テデスキ、母はピアニストのマリーザ・ボリーニでした。しかし、当時のイタリアで活発化していた極左テロ組織「赤い旅団」による危険を避けるため、一家はフランスの首都パリへと移住することになりました。

パリでの生活が始まると、ヴァレリアは現地のイタリア人学校で学び続けました。並行して、演劇への道を志し、アトリエ座でジャン・ダルネルの演技指導を受けたり、アメリカン・センターのブランシュ・サランのもとで演劇の基礎を学びました。特に重要な転機となったのは、難関を突破してナンテールのアマンディエ劇場の演劇学校に第一期生として入学できたことです。ここでは、ピエール・ロマンスやパトリス・シェローといった著名な演出家のもとで学び、後にフランス映画界で活躍するアニエス・ジャウイ、ヴァンサン・ペレーズ、マリアンヌ・ドニクールらと同期として切磋琢磨しました。本格的な演技のキャリアは、1983年に父の歌劇を映像化した作品で、シャンソン歌手のシャルル・アズナヴールと共演したことから始まります。

映画俳優としての正式なデビューは1986年のことです。以来、現在までに50本を超える映画作品に出演し、多様な役柄を演じてきました。その演技力は高く評価され、1993年に公開された『おせっかいな天使』での役柄で、フランス映画界の栄誉であるセザール賞の有望若手女優賞を受賞しました。また、2004年の作品『ふたりの5つの分かれ路』では、ヨーロッパ映画賞の女優賞候補にも挙げられています。

女優業と並行して、ヴァレリアは監督としても作品を発表しています。これまでに2本の長編映画を制作しており、それぞれ2003年と2007年に完成させています。自身の経験や人間関係を基にした作品が多いのが特徴です。

彼女の家族構成は特に注目を集めることがあります。実妹は、モデルや歌手として活動し、フランスのニコラ・サルコジ元大統領の夫人となったカーラ・ブルーニです。また、ヴァレリア自身も、2009年にはアフリカから幼い子どもを養子として迎え入れ、母親となっています。私生活では、俳優のルイ・ガレルとの関係もメディアで報じられました。二人は交際関係にあり、ヴァレリアが監督を務めた2007年の映画『女優』では、ルイ・ガレルが主要キャストとして出演しています。しかし、二人の関係は2012年に終止符が打たれました。

国際的な舞台でも活躍しており、日本にも縁があります。フランス映画を紹介する「フランス映画祭」には、1996年と2003年の二度にわたりゲストとして来日し、日本の観客にその姿を見せています。

ヴァレリア・ブルーニ・テデスキは、俳優として確固たる地位を築きながら、監督としても独自の作品世界を表現し続ける、現代ヨーロッパ映画界において欠かせない存在です。家族的な背景や、公私にわたる経験が彼女の作品に深みを与えています。

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