ヴァレンティーナ・アレグラ・デ・フォンテーヌ

コンテッサ・ヴァレンティーナ・アレグラ・デ・フォンテーヌ



マーベル・コミックの世界に登場する「コンテッサ・ヴァレンティーナ・アレグラ・デ・フォンテーヌ」（La Contessa Valentina Allegra de la Fontaine）は、諜報活動の世界で特異な存在感を放つキャラクターです。通称「ヴァル」としても知られ、その経歴は非常に複雑多岐にわたります。初登場は1967年8月に刊行された『ストレンジ・テイルズ』誌の159号、「ニック・フューリー エージェント・オブ・シールド」のストーリーラインであり、ライター兼アーティストのジム・ステランコによって創造されました。

原作コミックでの軌跡


イタリアの貴族階級出身で、伯爵夫人という肩書きを持つヴァレンティーナは、裕福で国際的な社交界（ヨーロッパのジェットセット）の一員としての顔を持っていました。しかし、その背景にはソ連のスパイ組織「リヴァイアサン」に所属していた両親の存在がありました。幼くして、反共産主義活動を支援していた両親が不慮の死を遂げた後、彼女は両親の遺志を継ぎ、反共産主義レジスタンスの一員として活動を開始します。

やがてその能力が国際諜報機関S.H.I.E.L.D.の目に留まり、スカウトを受けてエージェントとしての厳格な訓練プログラムに参加することになります。訓練の最終段階でS.H.I.E.L.D.の巨大な移動基地であるヘリキャリアに乗艦した際、長官であるニック・フューリーと出会いました。フューリーが女性エージェントに対する不用意な発言をしたことに対し、ヴァレンティーナは卓越した戦闘スキルを披露して彼を圧倒し、その実力でフューリーに強い印象を与えました。この出来事を機に、二人の間にはロマンチックな関係が芽生え、その絆は長年にわたり続きました。

ヴァレンティーナはその多様な才能と高度なスキルにより、S.H.I.E.L.D.の主要なメンバーへと瞬く間に昇り詰めました。ある時期には、S.H.I.E.L.D.内の女性エージェントチーム「ファム・フォース」のリーダーも務めています。彼女は、テロ組織RAIDの阻止支援や、ユニオン・ジャック、サブラ、サウジス、アラビアンナイトといった世界各地のヒーローたちとの連携任務など、多岐にわたる国際的な作戦に関与しました。また、英国における「超人登録法」の制定に際しては、コモドール・ランス・ハンターやアリスティア・スチュアートらと協力し、ジョセフ・ハウアーやキャプテン・ブリテンを含む英国の主要人物たちと会合を持ち、超人人口増加の影響について説明を行うなど、重要な役割を果たしました。

転機が訪れたのは「シークレット・ウォー」の直後です。ヴァレンティーナは正体不明のスクラルエージェントによって拉致され、その姿を模倣（擬態）されてしまいます。彼女に成り代わったスクラルはフューリーに接触し、S.H.I.E.L.D.の機密情報を入手しようとしましたが、フューリーがその正体を見破りスクラルを排除したことで、「シークレット・インベージョン」の存在が明らかになりました。

スクラルに拉致されていたヴァレンティーナは、ダム・ダム・デューガンら他の囚人たちと共に監禁から解放されます。しかし、『シークレット・ウォリアーズ』シリーズにおいて、彼女は宿敵ヒドラがS.H.I.E.L.D.を密かに掌握している状況下で、新たな「マダム・ヒドラ」としての地位に就いたことが示されます。最終的に、彼女がリヴァイアサンの三重スパイであったことがフューリーに露見します。ヒドラとリヴァイアサンという二つの組織が激しい抗争の末に壊滅した後、ヴァレンティーナは投獄され、ニック・フューリーとの関係は完全に断たれることになりました。『レイブンクロフト』のミニシリーズでは、彼女は精神医療施設レイブンクロフト内の超人たちを自らの目的に利用しようとする組織「J.A.N.U.S.」の一員として姿を現しています。

異なるユニバースでのヴァレンティーナ


  • - MC2: この未来世界を描いたユニバースでは、S.H.I.E.L.D.のエージェントとして登場。スパイダーガールと共闘し、カーネイジのシンビオートがもたらす脅威を巡って対立した後に、共にアメリカ政府に立ち向かう場面もありました。
  • - アルティメット・マーベル: こちらのヴァレンティーナは、巨大コングロマリットであるOXEグループの会長を務めており、産業界の億万長者たちが集う秘密結社「クラトスクラブ」の一員として描かれています。
  • - Earth X: この荒廃した未来世界では、S.H.I.E.L.D.のエージェントでしたが、アメリカを支配したノーマン・オズボーンが生み出した寄生生物に他の多くのエージェントと共に寄生されてしまいます。肉体はヒドラの一員として活動し、シー・ハルクの体を支配したマダム・ヒドラに率いられますが、彼女自身の魂は死者の領域へ送られました。
  • - ミュータントX: このユニバースでは、S.H.I.E.L.D.のエージェントとして登場し、S.H.I.E.L.D.が画策したレガシーウイルスの放出計画を阻止しようとするハボックやシックスらとリバティ島で交戦しました。

マーベル・シネマティック・ユニバース (MCU) での描写


実写作品群であるMCUでは、アカデミー賞ノミネート女優のジュリア・ルイス＝ドレイファスがコンテッサ・ヴァレンティーナ・アレグラ・デ・フォンテーヌを演じています。日本語吹替は藤貴子が担当しています。

MCUにおける彼女は、「ヴァル」というニックネームを名乗る謎めいた伯爵夫人として描かれています。その人物像は非常に飄々としており、時には不躾とさえ感じられる言動が目立ちます。例えば、初対面の相手に一方的にニックネームで呼ぶことを許したり、墓参りの場で大袈裟に鼻をかみ「中西部アレルギー」と嘯くなど、常識にとらわれない振る舞いを見せます。不名誉除隊処分を受けて失意の底にいるジョン・ウォーカーに対して、倫理的に問題のある言葉で彼に寄り添い、新たな道を示唆するなど、善悪の区分では捉えきれない複雑さを持っています。ウォーカーが超人血清を自己投与した事実や、ブラック・ウィドウがホークアイを救うために自らの命を犠牲にした詳細、さらにはヘルムート・ジモとの関係を示唆するなど、彼女は多くの秘密やインサイダー情報に通じていることが示唆されています。また、かつてS.H.I.E.L.D.及びCIAの要人であったエヴェレット・ロスとは、過去に婚姻関係にあったことが判明しています。

彼女のMCU初登場はドラマシリーズ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』です。同作で不名誉除隊となったジョン・ウォーカーとその妻オリヴィアの前に突如現れ、図々しく二人の会話に割り込みます。ウォーカーの特定の界隈での評価が高まっていること、そしてキャプテン・アメリカの盾が政府のものではないという「汚い国家機密」を示唆しつつ、彼の才能を称賛し、困ったことがあれば自分が新たな居場所を用意すると持ちかけ立ち去ります。後日、その言葉通り、フラッグ・スマッシャーズとの戦いを終えたウォーカーに新たなコスチュームと「U.S.エージェント」というコードネームを与えました。

映画『ブラック・ウィドウ』では、クレジット後のカメオ出演ながら重要な役割を担いました。既にエレーナ・ベロワと仕事上の関係がある様子が描かれ、休暇でナターシャの墓参りをしていたエレーナの傍らに現れ、ホークアイがナターシャを死に追いやった張本人だと示唆し、彼を暗殺する任務を依頼しました。

『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー|ブラックパンサー_ワカンダ・フォーエバー』では、CIA長官というより公的な立場で登場し、元夫であるエヴェレット・ロスとの関係も明らかにされました。今後の登場作品としては、2025年5月2日公開予定の映画『サンダーボルツ*』への出演が決定しています。

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