ヴァージン・クロスカントリー

ヴァージン・クロスカントリー：イギリス長距離列車運行の歴史

ヴァージン・クロスカントリーは、イギリス国鉄民営化後の1997年から2007年まで、イギリスの長距離列車運行を担っていた会社です。ヴァージン・グループが設立したヴァージン・レール・グループ傘下で、インターシティ・クロスカントリー・フランチャイズの運行権利を獲得。その後、ステージコーチ・グループと共同経営となります。ヴァージン・トレインズとは共通のブランドイメージを使用し、長距離路線網を構築していましたが、2007年にアリーヴァに事業が引き継がれ、歴史に幕を閉じました。

設立と経営

1996年、ヴァージン・レール・グループはインターシティ・クロスカントリー・フランチャイズの運営権を獲得、1997年1月5日に運行を開始しました。当初はヴァージン・グループ100％出資でしたが、1998年にはステージコーチ・グループが49％の株式を取得し、共同経営体制となりました。

運営期間中には、フランチャイズ契約の停止や再編といった困難な局面も経験します。ウェスト・コースト本線の改良工事の遅れにより、2002年にはフランチャイズ契約が停止され、収益構造の見直しを余儀なくされました。

2006年には、フランチャイズ再編に伴い、ウェスト・コースト本線関連の運行を他の会社に移管。新たな入札に参加するも落札できず、2007年11月、アリーヴァに運行を引き継ぎ、ヴァージン・クロスカントリーは解散しました。

運行と路線網

ヴァージン・クロスカントリーの路線網は、複数の本線級路線をまたぐ長距離路線が中心でした。特に2003年以降は、ロンドンに乗り入れない系統が大半を占めるようになりました。運行路線にはイギリス最長級の列車も含まれ、すべての路線がバーミンガム・ニューストリート駅を発着または経由していました。

従来のクロスカントリールートだけでなく、ウェスト・コースト本線を利用したスコットランドへの路線も運行していました。1998年には、新たにポーツマス・ハーバー～リヴァプール・ライム・ストリート間、ポーツマス・ハーバー～ブラックプール・ノース間の路線を開設するなど、路線網の拡大にも取り組んでいました。

運行計画と車両

ヴァージン・クロスカントリーは、イギリス国鉄から引き継いだ車両に加え、新型車両の導入にも力を入れていました。ボンバルディア製の220形、221形気動車（ボイジャー、スーパーボイジャー）を導入し、老朽化した車両の置き換えを進めました。

2002年には、運行の効率化を目指した「オペレーション・プリンセス」を開始しました。しかし、新型車両の故障や混雑などにより、定時運行率が大幅に低下し、計画は当初の意図通りには進展しませんでした。そのため、一部路線からの撤退を余儀なくされました。

また、ウェスト・コースト本線高速化後の運行計画として「プロジェクト・オメガ」も策定していました。ロンドンとティーズサイド地域を結ぶ新路線や、ポーツマス・ハーバーとノッティンガムを結ぶ路線の開設などが計画されていましたが、実現には至りませんでした。

車両面では、インターシティ125の改修を行い、255形「ヴァージン・チャレンジャー」として運用する計画もありましたが、「オペレーション・プリンセス」の失敗により中止されています。

運行終了時点

2007年11月の運行終了時点では、主要な3系統が運行されていました。これらは、後継のクロスカントリーによって引き継がれました。

まとめ

ヴァージン・クロスカントリーは、イギリスの長距離鉄道において重要な役割を果たした会社でした。しかし、経営環境の変化や運行計画の困難、車両のトラブルなど、様々な課題に直面し、10年間の歴史に幕を閉じました。その経験は、後のイギリス鉄道運営のあり方に影響を与えたと言えるでしょう。 ヴァージン・クロスカントリーの成功と失敗は、民営化後の鉄道事業運営の難しさを改めて示す事例と言えます。将来、イギリスの鉄道事業がどのように発展していくのか、その動向を見守る必要があるでしょう。

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