ヴィクトリア・オブ・ザ・ユナイテッド・キングダム (1868-1935)

ヴィクトリア王女：生涯と人物像

ヴィクトリア・オブ・ザ・ユナイテッド・キングダム王女（1868年7月6日 - 1935年12月3日）は、エドワード7世とアレクサンドラ王妃の次女として誕生しました。家族からは「トリア」の愛称で親しまれました。彼女の生涯は、王室の一員としての公務と、一人の女性としての内面的な豊かさ、そして家族との深い絆に彩られています。

幼少期と教育

ヴィクトリアは、ウェールズ公夫妻であった両親のもと、マールバラ・ハウスで生まれました。誕生時には、英国君主の男系女孫として「ウェールズ公女」の称号と「王家の殿下」の敬称を与えられました。洗礼式では、ヴィクトリア・アレクサンドラ・オルガ・メアリーという正式な洗礼名が授けられました。姉妹と共に家庭教師による教育を受け、マールバラ・ハウスやサンドリンガム・ハウスで育ちました。夏には、母の故郷であるデンマークで過ごすこともありました。

ヴィクトリアは活発で、大柄で気品があり、ユーモアに溢れた人物として描かれています。特に、写真撮影に情熱を注ぎ、自ら撮影した家族写真のアルバムは数冊にも及び、その作品は展覧会でも展示されました。また、乗馬、サイクリング、読書、音楽鑑賞、ダンスを好み、動物愛護家でもあり、3匹の犬や鳩を飼っていました。

結婚観と家族関係

ヴィクトリアは、ロシアやギリシャの母方の親戚たちと親しく交流しました。同い年の従兄弟であるロシア皇太子ニコライ（後の皇帝ニコライ2世）は、一時ヴィクトリアに恋心を抱いていました。ニコライは彼女の生真面目さや完璧主義、そして「男まさりの知性」を賞賛しました。また、彼女はアレクサンドル・ミハイロヴィチ大公やミハイル・アレクサンドロヴィチ大公などのロシア皇族からも好意を寄せられました。

結婚の誘いもいくつかありましたが、いずれも実現しませんでした。デンマーク王太子クリスチャン（後のクリスチャン10世）やポルトガル王太子カルルシュ（後のカルルシュ1世）が求婚しましたが、両親の反対やカトリックへの改宗の要求によって破談となりました。また、年長の友人で男やもめの政治家ローズベリー伯爵が彼女を口説こうとしたこともありましたが、彼女は受け入れませんでした。

ヴィクトリアは生涯独身を通し、その決意は母親であるアレクサンドラ王妃にも尊重されました。彼女は両親と強く結びつき、公私にわたり両親を支え続けました。しかし、従妹のオリガ・アレクサンドロヴナ大公女は、ヴィクトリアが「母親にとって都合のよい侍女」のように見えたと回想し、彼女が結婚をためらったのは母親の反対を恐れたためではないかと推測しています。

ヴィクトリアは、兄であるジョージ5世王とも強い絆で結ばれていました。二人は性格がよく似ており、生涯にわたって互いを支え合いました。彼女の死は、死期が迫っていたジョージ王を深く悲しませました。しかし、ヴィクトリアは兄の妻であるメアリー王妃とはあまり親しくなく、疎遠な関係でした。

後半生と晩年

1905年、ヴィクトリアは母后や妹とともにポルトガルを公式訪問しました。父エドワード7世の崩御後も、母后アレクサンドラを支え続け、母后が患ったうつ病や難聴の介護を献身的に行いました。第一次世界大戦中には、兄ジョージ5世が王室の家名をウィンザー家に改めることを支持しました。

1925年に母后が亡くなった後、ヴィクトリアはコピンズという邸宅に移り住み、そこで余生を過ごしました。彼女は音楽鑑賞やガーデニングを楽しみ、地域社会の課題解決にも積極的に取り組みました。特に音楽家を支援し、若手チェロ奏者ビアトリス・ハリスンには最高級のチェロを贈りました。また、ハリスン姉妹を自宅に招いて演奏会を開いたり、一緒にコンサートに出かけたりしていました。彼女自身もピアノを演奏し、ハリスン姉妹との三重奏を録音したこともあります。

ヴィクトリアの友人には、マスグレイヴ準男爵一家やローズベリー伯爵、元女官ヴァイオレット・ヴィヴィアンなどがいました。ヴィヴィアンがアングルシー島に庭園を建設する際にも、彼女は支援を行いました。

ヴィクトリアは1935年12月3日、コピンズで息を引き取りました。彼女の死は、国会開会宣言のセレモニーを中止させるほどの影響力を持っていました。葬儀はウィンザー城内のセントジョージ礼拝堂で執り行われ、遺骸はフロッグモアの王室墓地に改葬されました。ジョージ5世は病をおして葬儀に参列しましたが、その直後に体調を崩し、翌月には亡くなってしまいました。

ヴィクトリアの遺産は、当時の金額で約23万7455ポンドと見積もられています。

彼女の生涯は、英国王室の一員として、また一人の女性としての豊かな人生を描いています。芸術への愛、慈善活動への献身、そして家族との深い絆は、彼女の人生を彩る重要な要素でした。

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