ヴィクトリア・フォン・バーデン

ヴィクトリア・フォン・バーデン

ヴィクトリア・フォン・バーデン（Viktoria von Baden）は、1862年8月7日にドイツのカールスルーエで生まれ、1930年4月4日にイタリアのローマで亡くなった。彼女はスウェーデン王グスタフ5世の王妃であり、スウェーデン語名ではヴィクトリア・アヴ・バーデン（Victoria av Baden）として知られる。彼女の生涯は、愛や苦悩、芸術的才能に満ちた特異なものであった。

生い立ちと結婚

ヴィクトリアは、バーデン大公フリードリヒ1世とその妻ルイーゼ・フォン・プロイセンの長女として誕生した。父はグスタフ4世アドルフの外孫であり、その家系は歴史的背景を持つ名門であった。1881年にスウェーデン＝ノルウェー王太子だったグスタフと結婚し、彼との間には3人の息子が誕生したが、彼女の結婚生活は幸福とは言えなかった。グスタフは両性愛者であり、他の相手との関係が噂される中で、ヴィクトリアは彼をドイツ側に引き寄せる策略を続けた。

健康と避寒地

ヴィクトリアは幼少期から健康に恵まれず、医療の誤診を受けていた。そのため、気管支炎や肺結核に悩まされ、温暖な国への旅行を通じて健康を回復することを好んだ。彼女は1892年以降、主治医のアクセル・ムンセの勧めでイタリアのカプリ島に避寒地を設け、そこで多くの時間を過ごした。カプリで建設したカーサ・カプリーレという別荘は、彼女にとっての安息の地となったが、同時に周囲からはムンセとの親密な関係が噂される原因ともなった。

王妃としての活動と苦悩

ヴィクトリアは第一次世界大戦中、ドイツ寄りの態度が批判を受け、スウェーデン国内での支持を失った。また、3度の難産を経験し、健康面での苦労が年々増す中、彼女の人格は尊敬されていたが、同時に多くの誤解に苦しむ日々が続いた。しかし、彼女は芸術に対する深い思いを持ち、特に音楽の才能が際立っていた。

彼女は優れたピアニストであり、ワーグナーの『ニーベルングの指環』を楽譜なしに弾きこなすことができた。シューベルトやベートーヴェンの作品を愛し、写真や絵画の作品も残していることから、彼女の芸術的才能は称賛され続けた。

晩年と死

ヴィクトリアの健康状態は次第に悪化し、カプリからローマへ避寒地を移すことを余儀なくされた。彼女が最後にスウェーデンに帰国したのは、夫のグスタフが70歳の誕生日を迎えた1928年のことであった。心身の状態が優れないまま、2年後にヴィクトリアはローマの自宅で静かにこの世を去った。

子女

彼女とグスタフの間には3人の息子が誕生した。

• - グスタフ6世アドルフ（1882年 - 1973年）：スウェーデン国王
• - ヴィルヘルム（1884年 - 1965年）：セーデルマンランド公
• - エーリク（1889年 - 1918年）：ヴェストマンランド公

ヴィクトリア・フォン・バーデンの生涯は、愛情と困難、成功と失敗、芸術の才能と国民との衝突の連続であった。彼女はその存在を通じて、歴史に色濃い足跡を残した。

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