ヴィットリア・コロンナ
ヴィットリア・コロンナ（Vittoria Colonna, 1492年4月 - 1547年2月25日）は、ルネサンス期のイタリアを代表する貴族女性であり、詩人です。ペスカーラ侯爵夫人として知られ、その文学的才能と知性は、同時代の多くの知識人や芸術家たちを魅了しました。
コロンナは、ローマ近郊のマリーノで、ナポリ王国の治安判事ファブリツィオ・コロンナと、ウルビーノ公の娘アニェーゼ・ダ・モンテフェルトロの間に生まれました。幼少期から優れた教育を受け、文学への愛を育みました。4歳の時にペスカーラ侯爵の息子、フェルナンド・フランチェスコ・ダヴァロスと婚約。多くの求婚者があったにもかかわらず、19歳で自身の希望によりダヴァロスと結婚。夫の叔母であるコンスタンツァ・ダヴァロスの文学サークルに参加しました。
結婚当初、二人はイスキア島で生活していましたが、夫がフランスとの戦争に参加することになり、別々の生活を送ることになります。ダヴァロスはラヴェンナの戦いで捕虜となりフランスに送られます。この間、コロンナとダヴァロスは文通を通じて愛を深め合いましたが、現存しているコロンナから夫への手紙は僅かしか残されていません。1516年から1522年の間に、コロンナは弟のフェデリコ、父のファブリツィオ、母のアニェーゼを相次いで亡くし、深い悲しみを経験しました。
夫のダヴァロスは神聖ローマ皇帝カール5世の軍の指揮官として活躍し、夫婦が会う機会は少なくなりました。しかし、コロンナの影響力は、夫がパヴィアの戦いの後に提案されたナポリ王の地位を拒否するほど大きなものでした。
1525年の夏、コロンナは病に倒れ、以後生涯にわたり病魔に苦しむことになります。この頃、バルダッサーレ・カスティリオーネの著作『宮廷人』の原稿を受け取り、ナポリに広めました。しかし、その海賊版の存在が、カスティリオーネに自身の著作の出版を急がせることになったというエピソードも残っています。
1525年12月、夫ダヴァロスはパヴィアの戦いで受けた傷が原因で亡くなります。危篤の報せを受け急ぎ駆けつけようとしたコロンナでしたが、彼の死は道中で知ることになります。失意の中、コロンナはローマの修道院へ引きこもりますが、教皇クレメンス7世と弟のアスカニオ・コロンナに拒否されます。その後、イスキア島に戻り数年間を過ごします。歴史家のアビゲイル・ブランディンは、この拒否の理由を、コロンナの再婚による政治的な同盟を期待したからではないかと指摘しています。しかし、彼女は再婚を拒み、残りの人生を詩作に捧げることを決意しました。
1527年のローマ略奪の際、コロンナ家はローマの人々に援助を提供し、メディチ家出身の教皇クレメンス7世との関係を改善する機会を得ました。しかし、フランス軍がナポリに侵攻すると、ダヴァロスの親族はイスキア島に避難しました。ローマ教皇領への侵攻から9ヶ月後、歴史家のパオロ・ジョヴィオがコロンナを訪ねてイスキア島に滞在し、コロンナを称える文章を書き残しています。
1529年、コロンナはローマに戻り、その後はオルヴィエートやイスキアを行き来する生活を送りました。また、亡き夫の過ちを正すため、モンテカッシーノ修道院に不正に押収された土地を返還するようにアヴァロス家に求めました。
1535年、コロンナの義妹ジョヴァンナ・ダラゴーナが、弟アスカニオとの別れを機にイスキア島にやってきます。コロンナは彼らの和解を試みますが、ジョヴァンナは拒否。しかし、彼女とコロンナは親交を深めました。二人はフアン・デ・バルデスを支持し、アスカニオが教皇パウルス3世への塩税支払いを拒否した際には、仲裁に入ろうとしました。
1536年、46歳でローマに戻ったコロンナは、レジナルド・ポールやコンタリーニからの尊敬を受け、61歳のミケランジェロと親密な友情を育みました。ミケランジェロは彼女にソネットを贈り、絵を描き、多くの時間を共に過ごしました。コロンナは自身の宗教的な詩の草稿を彼に贈っています。アスカニオ・コロンナが教皇パウルス3世に反逆した際、コロンナはオルヴィエートやヴィテルボに一時的に移住しましたが、ミケランジェロとの関係は変わらず、文通を続けました。
1537年、コロンナはヴェネツィア、聖地への旅を計画しますが、健康上の理由から実現せず、翌年ローマに戻りました。1544年に再びローマに戻り、サン・シルヴェストロ修道院で過ごし、1547年2月25日に息を引き取りました。
コロンナは、ピエトロ・ベンボ、ルイジ・アルマーニ、バルダッサーレ・カスティリオーネ、マルグリット・ド・ナヴァルなど多くの文学者と交流がありました。また、ピエトロ・カルネセッチやベルナルディーノ・オキノといったイタリアの宗教改革運動に関わる人物とも親交がありましたが、彼女自身は宗教改革の混乱が深刻化する前に亡くなりました。彼女の宗教的信念は、カトリック教会の教えに反するものではありませんでした。
コロンナは、多数の詩集と手紙を残しました。その作品は、彼女の深い信仰心、人間愛、そして文学的な才能を今に伝えています。
Rime de la Divina Vittoria Colonna Marchesa di Pescara (1538)
Rime de la Diva Vettoria Colonna (1539)
Rime de la Divina Vettoria Colonna (1540)
Dichiaratione fatta sopra la seconda parte delle Rime della Divina Vittoria Colonna (1543)
Le rime spirituali della illustrissima Signora Vittoria Colonna Marchesana di Pescara (1546)
死後に刊行されたものも多数あります。
Litere della Divina Vettoria Colonna Marchesana di Pescara alla Duchessa de Amalfi (1544, 1545)
Carteggio (死後、1892年に刊行)
* Bibliography for Vittoria Colonna, compiled by Ellen Moody.（外部リンクへのリンク）
コロンナの生涯は、ルネサンス期のイタリアにおける女性の知性と影響力を示す好例です。彼女の詩は、今日でも多くの人々に読まれ、愛されています。
生涯
生誕から結婚まで
コロンナは、ローマ近郊のマリーノで、ナポリ王国の治安判事ファブリツィオ・コロンナと、ウルビーノ公の娘アニェーゼ・ダ・モンテフェルトロの間に生まれました。幼少期から優れた教育を受け、文学への愛を育みました。4歳の時にペスカーラ侯爵の息子、フェルナンド・フランチェスコ・ダヴァロスと婚約。多くの求婚者があったにもかかわらず、19歳で自身の希望によりダヴァロスと結婚。夫の叔母であるコンスタンツァ・ダヴァロスの文学サークルに参加しました。
結婚当初、二人はイスキア島で生活していましたが、夫がフランスとの戦争に参加することになり、別々の生活を送ることになります。ダヴァロスはラヴェンナの戦いで捕虜となりフランスに送られます。この間、コロンナとダヴァロスは文通を通じて愛を深め合いましたが、現存しているコロンナから夫への手紙は僅かしか残されていません。1516年から1522年の間に、コロンナは弟のフェデリコ、父のファブリツィオ、母のアニェーゼを相次いで亡くし、深い悲しみを経験しました。
夫のダヴァロスは神聖ローマ皇帝カール5世の軍の指揮官として活躍し、夫婦が会う機会は少なくなりました。しかし、コロンナの影響力は、夫がパヴィアの戦いの後に提案されたナポリ王の地位を拒否するほど大きなものでした。
1525年の夏、コロンナは病に倒れ、以後生涯にわたり病魔に苦しむことになります。この頃、バルダッサーレ・カスティリオーネの著作『宮廷人』の原稿を受け取り、ナポリに広めました。しかし、その海賊版の存在が、カスティリオーネに自身の著作の出版を急がせることになったというエピソードも残っています。
夫の死後
1525年12月、夫ダヴァロスはパヴィアの戦いで受けた傷が原因で亡くなります。危篤の報せを受け急ぎ駆けつけようとしたコロンナでしたが、彼の死は道中で知ることになります。失意の中、コロンナはローマの修道院へ引きこもりますが、教皇クレメンス7世と弟のアスカニオ・コロンナに拒否されます。その後、イスキア島に戻り数年間を過ごします。歴史家のアビゲイル・ブランディンは、この拒否の理由を、コロンナの再婚による政治的な同盟を期待したからではないかと指摘しています。しかし、彼女は再婚を拒み、残りの人生を詩作に捧げることを決意しました。
1527年のローマ略奪の際、コロンナ家はローマの人々に援助を提供し、メディチ家出身の教皇クレメンス7世との関係を改善する機会を得ました。しかし、フランス軍がナポリに侵攻すると、ダヴァロスの親族はイスキア島に避難しました。ローマ教皇領への侵攻から9ヶ月後、歴史家のパオロ・ジョヴィオがコロンナを訪ねてイスキア島に滞在し、コロンナを称える文章を書き残しています。
1529年、コロンナはローマに戻り、その後はオルヴィエートやイスキアを行き来する生活を送りました。また、亡き夫の過ちを正すため、モンテカッシーノ修道院に不正に押収された土地を返還するようにアヴァロス家に求めました。
1535年、コロンナの義妹ジョヴァンナ・ダラゴーナが、弟アスカニオとの別れを機にイスキア島にやってきます。コロンナは彼らの和解を試みますが、ジョヴァンナは拒否。しかし、彼女とコロンナは親交を深めました。二人はフアン・デ・バルデスを支持し、アスカニオが教皇パウルス3世への塩税支払いを拒否した際には、仲裁に入ろうとしました。
1536年、46歳でローマに戻ったコロンナは、レジナルド・ポールやコンタリーニからの尊敬を受け、61歳のミケランジェロと親密な友情を育みました。ミケランジェロは彼女にソネットを贈り、絵を描き、多くの時間を共に過ごしました。コロンナは自身の宗教的な詩の草稿を彼に贈っています。アスカニオ・コロンナが教皇パウルス3世に反逆した際、コロンナはオルヴィエートやヴィテルボに一時的に移住しましたが、ミケランジェロとの関係は変わらず、文通を続けました。
1537年、コロンナはヴェネツィア、聖地への旅を計画しますが、健康上の理由から実現せず、翌年ローマに戻りました。1544年に再びローマに戻り、サン・シルヴェストロ修道院で過ごし、1547年2月25日に息を引き取りました。
コロンナは、ピエトロ・ベンボ、ルイジ・アルマーニ、バルダッサーレ・カスティリオーネ、マルグリット・ド・ナヴァルなど多くの文学者と交流がありました。また、ピエトロ・カルネセッチやベルナルディーノ・オキノといったイタリアの宗教改革運動に関わる人物とも親交がありましたが、彼女自身は宗教改革の混乱が深刻化する前に亡くなりました。彼女の宗教的信念は、カトリック教会の教えに反するものではありませんでした。
作品
コロンナは、多数の詩集と手紙を残しました。その作品は、彼女の深い信仰心、人間愛、そして文学的な才能を今に伝えています。
詩集（主なもの）
Rime de la Divina Vittoria Colonna Marchesa di Pescara (1538)
Rime de la Diva Vettoria Colonna (1539)
Rime de la Divina Vettoria Colonna (1540)
Dichiaratione fatta sopra la seconda parte delle Rime della Divina Vittoria Colonna (1543)
Le rime spirituali della illustrissima Signora Vittoria Colonna Marchesana di Pescara (1546)
死後に刊行されたものも多数あります。
手紙
Litere della Divina Vettoria Colonna Marchesana di Pescara alla Duchessa de Amalfi (1544, 1545)
Carteggio (死後、1892年に刊行)
外部リンク
* Bibliography for Vittoria Colonna, compiled by Ellen Moody.（外部リンクへのリンク）
コロンナの生涯は、ルネサンス期のイタリアにおける女性の知性と影響力を示す好例です。彼女の詩は、今日でも多くの人々に読まれ、愛されています。
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