ピエトロ・ベンボ
ピエトロ・ベンボ（Pietro Bembo, 1470年5月20日 - 1547年1月18日）は、ルネサンス期のイタリアを代表する詩人、人文学者、そして文学理論家です。聖ヨハネ騎士団の一員であり、ローマ・カトリック教会の枢機卿でもありました。ベンボは、近代イタリア語の発展に重要な役割を果たした人物として知られています。特に、フィレンツェを中心とするトスカーナ方言を、近代イタリア語の標準語として体系化することに大きく貢献しました。
ベンボの文学理論は、14世紀の詩人ペトラルカの作品から大きな影響を受けています。彼はペトラルカの作品を深く研究し、その詩的な構成や言葉遣いを分析しました。ベンボの理論は、16世紀の世俗歌劇であるマドリガーレの発展にも大きな影響を与えました。マドリガーレは、ベンボの理論に基づいて入念に構成された詩が、歌劇の中心的な要素となっていました。
ベンボは、ヴェネツィアの貴族階級に生まれました。彼の父ベルナルド・ベンボは、ダンテ・アリギエーリの没地であるラヴェンナに記念碑を建立した人物としても知られています。ベルナルドはヴェネツィア共和国の外交官であり、幼いピエトロも父とともに各地を旅しました。特にフィレンツェでの滞在中に、彼はトスカーナ方言の魅力に惹かれ、この方言が後のイタリア文学や音楽の歴史において重要な役割を果たすことになりました。
ベンボは、メッシーナの文献学者コンスタンティノス・ラスカリスのもとでギリシア語を学び、その後パドヴァ大学に入学しました。1497年から1499年には、フェラーラ公エルコレ1世・デステの宮廷で過ごし、詩人ルドヴィーコ・アリオストと出会いました。この時期に、宮廷での恋愛劇を描いた最初の著作『アーゾロの談論』を書き始めました。この作品は、ボッカッチョやペトラルカの作品を彷彿とさせ、16世紀の音楽にも影響を与えています。ベンボは、自身の詩をリュートの伴奏で歌うことを好み、音楽愛好家でもあったマントヴァ侯妃イザベラ・デステに著作を贈ったことも知られています。
ベンボは、1502年と1503年にもフェラーラを訪れており、フェラーラ公妃ルクレツィア・ボルジアとの不倫関係も噂されています。1506年から1512年にはウルビーノ公国に滞在し、イタリア語での詩歌制作について論じた最も重要な著作『俗語読本』を執筆しました。この著作は、1525年に出版され、彼の言語理論が広く知られるようになりました。1513年には、枢機卿ジュリオ・デ・メディチ（後のローマ教皇クレメンス7世）の随伴員としてローマを訪れ、教皇レオ10世のラテン語担当秘書官に任命されました。1514年には、聖ヨハネ騎士団の一員にも選ばれています。
教皇レオ10世の死去と自身の健康上の理由から、1521年にローマを離れパドヴァへ移りました。パドヴァでも著作活動を続け、1525年に『俗語読本』を出版しました。1530年には、故郷フィレンツェの公式歴史担当官職に就き、サン・マルコ寺院付属図書館の館長も務めました。
1538年、教皇パウルス3世によって枢機卿に指名され、ローマに戻り助祭の叙階を受けました。1539年には枢機卿に任命され、その後いくつかの教会で枢機卿を務めました。晩年は、著作活動と古典研究に励み、その業績からグッビオとベルガモの司教区管理者にも任命されました。
1547年にローマで77歳で死去し、サンタ・マリア・ソプラ・ミネルヴァ教会に埋葬されました。
ベンボの『俗語読本』は、ペトラルカの文章を模範とし、詩歌の構成、押韻、言葉の響きなどを詳細に論じました。彼は、詩歌で使用する言葉は、音の調和、押韻、文の長さなどを厳密に計算すべきだと主張しました。これにより、詩歌を聴く者に、甘美、優雅、厳粛、悲嘆などの感情を喚起できると考えました。この理論は、16世紀のマドリガーレの発展に大きく貢献しました。ベンボの理論に基づいて書かれた詩は、マドリガーレの重要な要素となったのです。
ベンボは、『ヴェネツィアの歴史』などの歴史書も執筆しています。また、初期の著作である『アーゾロの談論』は、プラトニック・ラブをテーマに扱っていますが、ベンボ自身の不倫関係との対比が興味深いところです。
出版業者のアルドゥス・マヌティウスが1501年に出版した、ペトラルカの詩をベンボが再編した詩集や、1502年に出版したベンボの『Terzerime』も重要な著作です。また、音楽関係の印刷業者アンドレア・アンティーコは、ベンボの影響を受けており、アドリアン・ヴィラールトらヴェネツィア楽派初期の音楽家たちの楽曲を出版し、ベンボの音楽理論を広めました。ヴィラールトの『ムジカ・ノーヴァ』は、ベンボの音楽理論との深い関係が見られます。
さらに、書体の「BEMBO」は、ベンボにちなんで名付けられています。
ベンボは、ルネサンス期のイタリアにおいて、文学、言語、音楽の分野に多大な影響を与えた人物として、今もなお評価されています。
ベンボの文学理論は、14世紀の詩人ペトラルカの作品から大きな影響を受けています。彼はペトラルカの作品を深く研究し、その詩的な構成や言葉遣いを分析しました。ベンボの理論は、16世紀の世俗歌劇であるマドリガーレの発展にも大きな影響を与えました。マドリガーレは、ベンボの理論に基づいて入念に構成された詩が、歌劇の中心的な要素となっていました。
生涯
ベンボは、ヴェネツィアの貴族階級に生まれました。彼の父ベルナルド・ベンボは、ダンテ・アリギエーリの没地であるラヴェンナに記念碑を建立した人物としても知られています。ベルナルドはヴェネツィア共和国の外交官であり、幼いピエトロも父とともに各地を旅しました。特にフィレンツェでの滞在中に、彼はトスカーナ方言の魅力に惹かれ、この方言が後のイタリア文学や音楽の歴史において重要な役割を果たすことになりました。
ベンボは、メッシーナの文献学者コンスタンティノス・ラスカリスのもとでギリシア語を学び、その後パドヴァ大学に入学しました。1497年から1499年には、フェラーラ公エルコレ1世・デステの宮廷で過ごし、詩人ルドヴィーコ・アリオストと出会いました。この時期に、宮廷での恋愛劇を描いた最初の著作『アーゾロの談論』を書き始めました。この作品は、ボッカッチョやペトラルカの作品を彷彿とさせ、16世紀の音楽にも影響を与えています。ベンボは、自身の詩をリュートの伴奏で歌うことを好み、音楽愛好家でもあったマントヴァ侯妃イザベラ・デステに著作を贈ったことも知られています。
ベンボは、1502年と1503年にもフェラーラを訪れており、フェラーラ公妃ルクレツィア・ボルジアとの不倫関係も噂されています。1506年から1512年にはウルビーノ公国に滞在し、イタリア語での詩歌制作について論じた最も重要な著作『俗語読本』を執筆しました。この著作は、1525年に出版され、彼の言語理論が広く知られるようになりました。1513年には、枢機卿ジュリオ・デ・メディチ（後のローマ教皇クレメンス7世）の随伴員としてローマを訪れ、教皇レオ10世のラテン語担当秘書官に任命されました。1514年には、聖ヨハネ騎士団の一員にも選ばれています。
教皇レオ10世の死去と自身の健康上の理由から、1521年にローマを離れパドヴァへ移りました。パドヴァでも著作活動を続け、1525年に『俗語読本』を出版しました。1530年には、故郷フィレンツェの公式歴史担当官職に就き、サン・マルコ寺院付属図書館の館長も務めました。
1538年、教皇パウルス3世によって枢機卿に指名され、ローマに戻り助祭の叙階を受けました。1539年には枢機卿に任命され、その後いくつかの教会で枢機卿を務めました。晩年は、著作活動と古典研究に励み、その業績からグッビオとベルガモの司教区管理者にも任命されました。
1547年にローマで77歳で死去し、サンタ・マリア・ソプラ・ミネルヴァ教会に埋葬されました。
著作と影響
ベンボの『俗語読本』は、ペトラルカの文章を模範とし、詩歌の構成、押韻、言葉の響きなどを詳細に論じました。彼は、詩歌で使用する言葉は、音の調和、押韻、文の長さなどを厳密に計算すべきだと主張しました。これにより、詩歌を聴く者に、甘美、優雅、厳粛、悲嘆などの感情を喚起できると考えました。この理論は、16世紀のマドリガーレの発展に大きく貢献しました。ベンボの理論に基づいて書かれた詩は、マドリガーレの重要な要素となったのです。
ベンボは、『ヴェネツィアの歴史』などの歴史書も執筆しています。また、初期の著作である『アーゾロの談論』は、プラトニック・ラブをテーマに扱っていますが、ベンボ自身の不倫関係との対比が興味深いところです。
出版業者のアルドゥス・マヌティウスが1501年に出版した、ペトラルカの詩をベンボが再編した詩集や、1502年に出版したベンボの『Terzerime』も重要な著作です。また、音楽関係の印刷業者アンドレア・アンティーコは、ベンボの影響を受けており、アドリアン・ヴィラールトらヴェネツィア楽派初期の音楽家たちの楽曲を出版し、ベンボの音楽理論を広めました。ヴィラールトの『ムジカ・ノーヴァ』は、ベンボの音楽理論との深い関係が見られます。
さらに、書体の「BEMBO」は、ベンボにちなんで名付けられています。
ベンボは、ルネサンス期のイタリアにおいて、文学、言語、音楽の分野に多大な影響を与えた人物として、今もなお評価されています。
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