ヴィユ・コロンビエ劇場

パリのシックス区、ヴュー・コロンビエ通りに静かに佇むヴュー・コロンビエ劇場は、約三百席を有する中規模な劇場です。この場所は、フランス演劇史において革新的な足跡を残した演出家、ジャック・コポーによって、その名を広く知られるようになりました。現在では、国立の劇団であるコメディ・フランセーズの第二劇場として、主に現代劇の上演に利用されています。

劇場の起源は十九世紀初頭に遡ります。かつてこの地にあったのは、アテネ・サン＝ジェルマンという名の劇場でした。当初はメロドラマなどを上演していましたが、時が経つにつれて劇場としての機能は薄れ、一般の集会や稽古場として使われるようになり、荒廃が進んでいました。

演劇界の刷新を目指し、自身の劇団を立ち上げる構想を練っていたジャック・コポーは、この荒れ果てた劇場に注目しました。彼はこの建物を借り受け、ヴュー・コロンビエ劇場と改称し、大規模な改修を施しました。そして一九一三年十月二十三日、彼は自身の劇団の旗揚げ公演を行います。翌年五月までのシーズンで十四本の作品を上演した劇団は、飾り立てない簡潔な舞台装置、文学性を重視した台本、そして一切の無駄を排した洗練された演出によって大きな反響を呼びました。その独自の演劇スタイルは高く評価され、「ヴィユ・コロンビエ」の名声はフランス国内に留まらず、海外にも知られることとなりました。

しかし、一九一四年八月に第一次世界大戦が勃発すると、劇場の活動は中断され、閉鎖を余儀なくされます。戦後、一九一九年には劇団員であったルイ・ジューヴェの手により、再び劇場が改修されました。この時、舞台には額縁がなく、床はコンクリート打ちという、画期的な常設舞台が設けられました。

一九二〇年二月に活動を再開したヴュー・コロンビエ劇場でしたが、一九二四年五月、ジャック・コポーは劇団を解散して隠棲を選びます。その後、劇場は一時的に映画館として利用されることになりました。

一九三一年一月からは、コポーの甥であるミシェル・サン＝ドニを中心とした十五人劇団（Compagnie des Quinze）が、続いて一九三三年六月からはジョルジュ・ピトエフ一座がこの劇場で公演を行いました。第二次世界大戦中は、一九三九年以降、劇場の活動は低迷し、一時的な閉鎖も経験しました。

戦時中の一九四四年五月二十七日には、ジャン＝ポール・サルトルの代表作『出口なし』がこの劇場で初演されるという重要な出来事がありました。パリ解放後は再び活気を取り戻し、特に新作の積極的な上演を通じて活動を続けましたが、一九七三年末に惜しまれつつ閉鎖されました。

閉鎖された建物は荒れるに任されていましたが、一九七八年には文化省によって歴史的記念物として指定され、保護対象となります。そして一九八六年、フランス政府によって買い上げられ国有化されました。一九八九年からは、コメディ・フランセーズの第二劇場として位置づけられ、主に現代演劇を上演するための拠点として、大規模な改修工事が施されました。こうして生まれ変わったヴュー・コロンビエ劇場は、一九九三年四月、再びその扉を開き、今日に至るまで活動を続けています。

劇場の歴史を通じて、ジャック・コポー（一九一三-一九二四年）、ジャン・テデスコ（一九二四-一九三四年）、ルネ・ロシェ（一九三五-一九四〇年）、ポール・アネ・バデル（一九四〇-一九五五年）、ベルナール・ジェニー（一九六一-一九七〇年）、マルト・メルカディエ（一九七〇-一九七一年）といった人物が支配人を務めました。一九八九年以降は、コメディ・フランセーズの一部として運営されています。

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