ヴィルヘルム・フリードリヒ・ツー・ヴィート

ヴィルヘルム・フリードリヒ・ツー・ヴィート：アルバニア公スカンデルベグ二世の波乱の生涯

ヴィルヘルム・フリードリヒ・ツー・ヴィート（1876年 - 1945年）は、ドイツの旧諸侯ヴィート家の出身で、アルバニア独立直後の混乱期に同国の君主として擁立された人物です。彼はアルバニア公として、そして自身はアルバニア国王（Mbret）と自称しました。 スカンデルベグ二世という称号を用いたことでも知られています。

ヴィルヘルムは、ルーマニア王妃エリサベタの実弟であるヴィート侯ヴィルヘルム・アドルフの子として生まれました。伯母であるエリサベタ王妃からの推薦により、アルバニア君主候補として浮上します。当時、アルバニアは新興国であり、その君主選びは欧州列強の思惑が複雑に絡み合う状況でした。オーストリア＝ハンガリー、イギリス、フランス、ドイツ、ロシア、イタリアといった主要国は、ヴィルヘルムの擁立に同意し、1913年11月、彼はアルバニアの君主として迎えられました。この決定は、アルバニア首相イスマイル・ケマリも承認しています。しかし、実はヴィルヘルム自身は当初、君主の依頼を拒否していました。しかし、オーストリアの圧力により、最終的に即位を決意することとなりました。

1914年2月、ヴィルヘルムは正式に即位を宣言し、同年3月には妻ゾフィーと共にアルバニアのドゥラスに到着しました。しかし、彼の治世は最初から困難に満ちていました。彼はトゥルハン・ペルメティに組閣を命じましたが、大臣の一人であるエサド・トプタニがイタリアから資金提供を受けてクーデターを計画していることを知ります。ヴィルヘルムはトプタニを逮捕し、死刑を宣告しようとしましたが、イタリアの介入により、トプタニは減刑されイタリアへ亡命しました。

ヴィルヘルムの統治は脆弱であり、アルバニア中部では外国人支配を嫌う反乱が勃発しました。この反乱はギリシャの支援を受け、北エピルス地方政府が成立する事態に発展しました。更にはギリシャ軍がアルバニア南部へ侵攻し、ベラトとコルチェを占領しました。第一次世界大戦の勃発は状況を更に悪化させます。オーストリア＝ハンガリーはヴィルヘルムにアルバニア軍をオーストリア軍支援に派遣するよう要求しましたが、ロンドン条約に基づく中立を主張しこれを拒否したため、彼への支援は打ち切られました。

1914年7月以降、アルバニア南部はギリシャに掌握され、内戦状態に陥りました。大国からの圧力も絶えず、ヴィルヘルムは同年9月に亡命しました。しかし、形式上は君主の地位は保持していました。ドイツへ戻ったヴィルヘルムはドイツ帝国軍に加わり、アルバニア周辺国の敗北を期待しましたが、戦後、パリ講和会議では彼の公位復帰は支持されませんでした。アルバニアは首相を代理として据え、公国としての体制を維持していましたが、1925年1月31日、アルバニア共和国が成立し、スカンデルベグ二世の治世は正式に終焉を迎えました。

その後、アルバニアではアフメト・ゾグが国王となってアルバニア王国を樹立し、君主制が復活しました。しかし、ヴィルヘルムは自身こそが正当な君主であると主張し続け、長男の公位継承権も主張し続けました。彼はルーマニアのプレデアルで1945年に死去しました。彼の短いながらも波乱に満ちたアルバニア公としての治世は、アルバニア独立初期の複雑な国際情勢と国内事情を象徴する出来事と言えます。ヴィルヘルムの生涯は、大国間の思惑と、小国の独立の困難さを改めて私たちに示しています。

結婚と子女

ヴィルヘルムは1906年11月30日、ゾフィー・フォン・シェーンブルク＝ヴァルデンブルクと結婚し、一男一女をもうけました。

マリー・エレオノーレ（1909年 - 1956年）：シェーンブルク＝ヴァルデンブルク侯子アルフレートと結婚。
カール・ヴィクトル（1913年 - 1973年）：アルバニア公世子。

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