ドゥラス

ドゥラス：アドリア海の要衝都市

ドゥラスは、アルバニア共和国第二の都市であり、ドゥラス州・ドゥラス県の県都です。アドリア海に面した絶好の立地を活かし、古くから重要な港湾都市として栄えてきました。イタリア、ギリシャ、モンテネグロなど周辺諸国との活発な貿易拠点として機能する一方、鉄道網を通じてアルバニア内陸部とも結ばれ、工業製品の集散地としての役割も担っています。首都ティラナから約36キロメートル東に位置し、近隣にはクルヤなどの中心都市があります。

悠久の歴史：古代から現代まで

ドゥラスの歴史は紀元前627年にまで遡ります。当時、コリントスとケルキラ出身の古代ギリシャ人によって、エピダムノスという都市が建設されました。天然の良港と、敵の侵入を防ぐのに適した地形が、都市発展の大きな要因となりました。エピダムノスの政治体制は高度に発達しており、アリストテレスもその政治システムを高く評価したと伝えられています。しかし、コリントスとケルキラの対立が原因でペロポネソス戦争に発展し、都市は歴史の大きなうねりに巻き込まれていきます。

紀元前312年にはイリュリア王グラウキアスに占領され、その後、イリュリア戦争を経てローマの支配下に入ります。ローマ人は都市名をデュラキウムと改称し、エグナティア街道の西側の起点として、重要な軍事・海軍基地へと発展させました。デュラキウムは、ローマ内戦におけるデュラキウムの戦い（紀元前49年）の舞台にもなった重要な都市でした。

ローマ帝国時代には繁栄を極め、テッサロニキとコンスタンティノープルを結ぶ街道の西端として機能しました。また、アウグストゥス帝によって自由都市とされ、4世紀にはエピルス・ノヴァ属州の首都に昇格します。しかし、地震による被害や民族移動の影響を受けながらも、東ローマ帝国の支配下で重要な港湾都市としてその地位を維持しました。

中世には、ブルガリア帝国やノルマン人、ヴェネツィア共和国、シチリア王国、セルビア王国など、数々の勢力の支配下に置かれました。特にヴェネツィア共和国支配下では、ドゥラッツォとして知られ、地中海貿易の中継地として重要な役割を果たしました。その後、オスマン帝国の支配下に入りますが、重要性は低下し、人口も減少しました。

20世紀に入ると、アルバニアの独立運動の中心地として重要な役割を果たします。1912年にはアルバニア独立が宣言され、1913年から1920年にかけては、ドゥラスがアルバニアの首都となりました。しかし、第一次世界大戦や第二次世界大戦において、イタリアやオーストリア＝ハンガリー、ナチス・ドイツなどの占領を受け、激しい戦闘や空爆の被害を受けました。

共産主義政権下では、港湾施設の拡張や工業施設の建設が積極的に進められましたが、1990年代には共産主義体制崩壊後、経済難民の流出やコソボ紛争による難民流入など、社会不安が深刻な問題となりました。21世紀に入ってからも、地震などの自然災害に見舞われながらも、ドゥラスは着実に発展を続けています。

ドゥラスの現在：観光と経済

ドゥラスは、現在も西欧とを結ぶ重要な港湾都市として機能しており、イタリアのバーリなどとの定期フェリー航路も就航しています。造船業や製革業、プラスチック製造、タバコ製造などが主要産業として存在します。近年は観光業が盛んで、年間60万人以上の観光客が訪れています。美しいビーチは国内外からの観光客に人気があり、首都ティラナからのアクセスも容易です。

ドゥラスには、考古学博物館、歴史博物館、劇場、図書館など、多くの文化施設も存在します。ビザンツ時代の城壁や円形劇場跡など、歴史的な建造物も残っており、観光資源として活用されています。また、独特の風景として、旧共産主義政権時代に建設された多数のコンクリート製の掩蔽壕が、海岸沿いに残っている点も特徴的です。

ドゥラスは、古代から現代まで続く豊かな歴史と、美しい自然、そして活気ある港町として、アルバニアの重要な都市として存在感を示し続けています。

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