ヴィルヘルム・リスト

ヴィルヘルム・リスト（Wilhelm List, 1880年5月14日 - 1971年8月16日）は、ドイツの陸軍軍人であり、最終階級は陸軍元帥です。彼は、第二次世界大戦中にドイツ国防軍の軍司令官、軍集団司令官として重要な役割を果たしました。

生涯

ヴィルヘルム・リストは、1880年、バイエルン王国ウルム近郊のオーバーキルヒベルクで生まれました。1889年にバイエルン王国軍に入隊し、1900年に少尉に任官されました。その後、1904年に大隊副官、1908年には中尉としてバイエルン陸軍大学に入学し、卒業とともに大尉に昇進、バイエルン参謀本部に配属されました。第一次世界大戦が開戦すると、バイエルン第2軍団参謀として従軍しましたが、重病のため一時戦線を離脱。回復後、1917年にバイエルン後備第8歩兵師団参謀長となり、1918年に少佐に昇進しました。終戦時にはバイエルン軍事省に所属していました。

戦後の1920年代初めには、義勇軍（フライコール）に参加し、ミュンヘンで組織された左翼急進派のレーテ（評議会）共和国と対峙しました。

1923年9月には第19歩兵連隊で大隊長となり、1924年に中佐に昇進、第7軍管区教育部長に就任しました。その後10年間は、ドイツ国防軍で教育業務に従事しました。1926年には軍事省に転じ教育局員、1927年には大佐に昇進し教育局長を務めました。1930年にはドレスデンの歩兵学校長となり、同年10月に少将に昇進、1932年には中将に昇進しました。

1933年10月1日、第4軍管区司令官および第4歩兵師団長に就任。1935年10月には歩兵大将に昇進しました。1938年2月には第2集団司令官に任命され、同年4月のオーストリア併合に伴い、ウィーンに司令部を置く第5集団司令官に転じ、オーストリア連邦軍をドイツ国防軍に編入する業務に従事しました。

1939年4月1日に上級大将に昇進し、同年9月に第二次世界大戦が勃発すると、第14軍司令官としてポーランド侵攻に従軍しました。その戦功により、9月30日に騎士鉄十字章を受章しました。翌年の西方作戦では、第12軍を率いてマジノ線突破に成功し、その功績により7月19日に元帥に列せられました。

1941年2月、第12軍はバルカン半島における主力としてルーマニアに駐屯しました。そこでリスト元帥は、ブルガリア参謀本部との交渉を委任され、ドイツ軍部隊のブルガリア領通行を許可する秘密協定に調印しました。同年2月28日には、リスト率いる第12軍がブルガリアに進駐し、その翌日、ブルガリアは日独伊三国同盟に加盟しました。

1941年4月、バルカン作戦に第12軍司令官として従軍し、同時にこの方面の大陸部分での全ドイツ軍の指揮を担当しました。4月17日のユーゴスラビア降伏に続き、21日にはギリシャが降伏しました。ヒトラーの指示により、同盟軍であるイタリア軍の士官を参列させずに降伏調印式が行われましたが、イタリアの独裁者ベニート・ムッソリーニがヒトラーに抗議したため、国防軍最高司令部作戦部長のアルフレート・ヨードルがドイツから参列し、イタリア士官も参列して改めて降伏調印式が行われました。バルカン作戦終了後、南東軍司令官としてセルビア、ギリシアの占領を担当しましたが、病気のため同年10月にこの職を辞しました。翌年にはヒトラーの命を受け、ドイツ軍占領下にあるノルウェーの防御体制を監察しました。

リストは、ナチスに対してあまり親近感を持っておらず、そのことはヒトラーに対してさえ隠そうとはしませんでした。そのため、他の国防軍将官の推薦を経て初めて新たな任務を与えられることになりました。1942年7月1日、東部戦線南部にあるA軍集団司令官に任命されましたが、作戦遂行をめぐりヒトラーと対立し、9月10日には更迭されました。その後、敗戦まで司令官に任命されることはありませんでした。ヒトラー暗殺計画には加担しませんでしたが、1944年7月20日の暗殺未遂事件後に多くの将軍が保身のためにヒトラーに誓紙を書いたのに対し、リストはそれを拒否しました。

1945年、アメリカ軍の捕虜となり、1948年にニュルンベルク継続裁判の一つ「捕虜裁判」で、バルカン半島を占領していた南東軍司令官の際に、配下のドイツ軍がギリシアやユーゴスラビアの民間人を殺害した責任を問われ、終身禁固刑の判決を受けました。1951年には病気を理由に特赦が申請されましたが、却下。しかし翌年、重病を理由にランツベルク刑務所から釈放されました。釈放から19年後の1971年、ガルミッシュ＝パルテンキルヒェンで死去しました。

リストの軍歴は、第一次世界大戦から第二次世界大戦に至る激動の時代を反映しており、そのキャリアは軍人としての才能と同時に、ナチス体制との複雑な関係を示しています。

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