ヴィーゲラン彫刻公園

ヴィーゲラン彫刻公園：人生の諸相を刻む場所

ヴィーゲラン彫刻公園は、ノルウェーの首都オスロのフログネル公園内にある彫刻庭園です。約32万平方メートルの広大な敷地には、ノルウェーを代表する彫刻家グスタフ・ヴィーゲランの作品のみが展示されています。212点もの彫刻作品は、ブロンズと花崗岩で制作され、老若男女600以上の人物が「人生の諸相」というテーマのもと、様々な姿で表現されています。

ヴィーゲランは、これらの彫刻の原型を全て粘土で原寸大で制作し、職人たちがそれをブロンズ像や石像へと仕上げていきました。公園内には、南東から北西へ約850メートルにわたる軸線が設けられ、作品は6つのセクションに分かれて配置されています。各セクションが、人生の様々な段階を象徴するようにデザインされています。

公園の構成

1. 正門（メインゲート）: 錬鉄と花崗岩で作られたこの門は、公園への入口であり、ヴィーゲランの作品でもあります。5つの大きな門と2つの小さな門、そして門番小屋から構成されています。
2. 橋: 「正門」と「噴水」の間にある池に架かる橋には、58体のブロンズ彫刻が並びます。これらは、裸の人々が様々な「人生の状態」を表しており、特に「怒った少年」の像は人気があります。
3. 子供の遊び場: 橋を渡った場所には、遊ぶ子供たちを表現した8つのブロンズ像が配置されています。広場の中心には、頭を下げた胎児の像が置かれています。
4. 噴水: 四角い水面の中央に円盤が掲げられた噴水は、周囲に人々の群像を描いた60点のブロンズ浮彫が配されています。死から新しい生命が生まれることを暗示しています。噴水を取り囲む広場には、白と黒の花崗岩がモザイク状に敷き詰められています。
5. モノリスの台地: 階段状に積み重ねられた石の壇の中心に、巨大な石柱「モノリッテン」がそびえ立ちます。壇の斜面には、「生命の環」をテーマにした36の人物群像が配置されています。
6. 生命の環: 軸線の北西端には、日時計と「生命の環」があります。4人の人物と1人の乳児が輪のように抱き合う姿は、永遠を象徴しています。

ヴィーゲランの軌跡

1900年代初頭から公共彫刻を手がけるようになったヴィーゲランは、ノルウェーを代表する彫刻家として知られるようになりました。1906年には、国会議事堂前に設置する噴水の私案を発表しますが、資金難で実現しませんでした。その後、ヴィーゲランは噴水設置の場所を探すことになります。

1910年代後半、アトリエを立ち退くことになったヴィーゲランは、1921年にオスロ市からフログネル公園近くの邸宅（現在のヴィーゲラン美術館）を新しいアトリエとして提供されました。その代わりに、自身の全作品をオスロ市に寄贈するという契約を締結しました。1924年、アトリエの隣にあった空き地を彫刻作品の公開場所として選び、生涯をかけてこの彫刻庭園の制作に打ち込みました。

ヴィーゲランは、公園の完成を見ることなく1943年に亡くなりましたが、その後も作品の設置は進められ、1946年には「モノリッテン」が、1947年には噴水が完成しました。公園は、彼の遺志により24時間開放されています。

象徴的な作品

モノリッテン：高さ14.12メートルの巨大な石柱で、121人の人物像が浮き彫りで表現されています。裸の人々がもつれ合い、空に向かって伸びる姿は、精神的な高みを目指す人間の欲求を表しているとされています。モノリッテンの制作には14年の歳月が費やされました。


ヴィーゲラン彫刻公園は、彫刻作品を通じて人間の生と死、喜びと苦悩といった普遍的なテーマを問いかける、他に類を見ない芸術空間です。訪れる人々は、作品に込められた深いメッセージと、ヴィーゲランの卓越した才能に触れることができるでしょう。

もう一度検索