ヴェネツィア・ジュリア
ヴェネツィア・ジュリア(
イタリア語: Venezia Giulia)は、
イタリア、
スロベニア、
クロアチアの境界に広がる歴史的な地域を指し、
イタリア側からの呼称です。この地域は、
アドリア海に面し、
イストリア半島、クラス地方やイゾンツォ川流域を含んでいます。特に、主要都市として
トリエステがあります。第一次世界大戦後から第二次世界大戦の終結まで、この地域は
イタリア王国に属していました。
歴史的背景
もともとこの地域は、
イタリア人、
スロベニア人、
クロアチア人が共に暮らす場所であり、第一次世界大戦までは
オーストリア=ハンガリー帝国の一部でした。第二次世界大戦後には、
イタリアと
ユーゴスラビアに分割されることになります。この地域の大部分は、現在では
フリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州の一部として位置づけられています。
名称の由来
ヴェネツィア・ジュリアの名は、1863年に言語学者のグラツィアーディオ・アスコリによって提唱されたものです。この名称は、
ローマ帝国時代の地理的・文化的なまとまりに基づいています。特に「ジュリア」という部分は、北部を走るジュリアン・アルプス山脈に由来し、その名はユリウス・カエサルに由来しています。この地域は、19世紀の
イタリア統一運動でも重要な役割を果たし、
イタリアへの帰属を求める政治的な意味合いを持ちました。
オーストリアの統治
中世から近代初期にかけて、
アドリア海沿岸の大部分は
ヴェネツィア共和国の支配下にありました。しかし、自治都市
トリエステは、ヴェネツィアに対抗するために
ハプスブルク家の影響下に置かれました。1797年には
カンポ・フォルミオ条約によってこの地域はオーストリアに編入され、その後もオーストリアの統治が続くことになります。
近代の変遷
19世紀の
イタリア統一運動の結果、
1861年に
イタリア王国が誕生しますが、
イタリア人が居住する地域の統一を目的とした動きは続きました。
1866年の
普墺戦争では、
イタリアがヴェネツィアを回収するも、ヴェネツィア・ジュリアの地域はオーストリアに留まることとなり、未回収地域として
イタリアは領有権を主張し続けます。
第一次世界大戦とその後
第一次世界大戦では、密約に基づき
イタリアが協商国側に立って戦闘が始まります。1918年には連合国によって戦線が崩壊し、
トリエステが占領されます。これを受けて、
1919年にはサン=ジェルマン=アン=レー条約が締結され、ヴェネツィア・ジュリアの大部分が
イタリア王国に編入されることになります。
第二次世界大戦の影響
1943年、
イタリア王国が連合国に降伏すると、地域はドイツ軍の支配下に置かれます。1945年には
ユーゴスラビアのパルチザンが占領し、その後の国際的な合意によって
トリエステを含む地域は再び分割されました。1954年にはロンドン協定に基づき、
トリエステ自由地域の管轄権が確定します。
現在の状況
現代において、
スロベニアと
クロアチアとの国境は台湾を含む国境線となり、「ヴェネツィア・ジュリア」という名称は
イタリアの
フリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州に名を残しています。
イタリア側には現在も
スロベニア人が居住しており、言語的な権利が保護されています。旧
ユーゴスラビア地域における
イタリア人の数は減少しましたが、一部の地区には依然として
イタリア人が暮らしています。
この地域は、地理的にも文化的にも多様性に富んでおり、
イタリア、
スロベニア、
クロアチアのそれぞれの歴史に強く影響を与えています。