イゾンツォ川

イゾンツォ川：歴史と自然が交錯する川

イゾンツォ川（スロベニア語ではソチャ川）は、スロベニア北西部からイタリア北東部にかけて流れ、アドリア海へと注ぐ美しい川です。その流れは、歴史的な戦いの舞台となり、同時に美しい自然を育む場所でもあります。

多様な名称

この川は、地域によって異なる名前で呼ばれています。イタリア語では「Isonzo」、スロベニア語では「Soča」として知られていますが、その他にも以下のような名称が存在します。

フリウリ語: Lusinç
ラテン語: Aesontius, Sontius, Isontius
* ドイツ語: Isonzo （歴史的には Sontig とも）

地理

イゾンツォ川は、その全長139kmのうち、上流部約96kmがスロベニア領内、下流部約43kmがイタリア領内を流れています。源流はジュリア・アルプス山脈の最高峰トリグラウ山の西、標高876mのトレンタ谷にあります。

流域には、ボヴェツ、コバリード、トールミン、カナル、プラーヴ、ノヴァ・ゴリツァ（スロベニア領）、ゴリツィア（イタリア領）などの都市が点在し、モンファルコーネ郊外でアドリア海に注ぎます。

かつてはオーストリア帝国領内を流れていましたが、第一次世界大戦後にイタリア領となり、現在の国境線は第二次世界大戦後のイタリアとユーゴスラビアの国境を基盤としています。

歴史

イゾンツォ川は、歴史的に重要な戦いの舞台となりました。特に第一次世界大戦中の1915年から1917年にかけては、イタリア戦線における激戦地となり、12回にも及ぶ「イゾンツォの戦い」が繰り広げられました。イタリア軍は、オーストリア＝ハンガリー帝国領であったゴリツィアの占領を目指しましたが、戦線は膠着し、多くの犠牲者を出しました。

1917年10月のカポレットの戦いでは、ドイツ軍の支援を受けたオーストリア軍がイタリア軍を打ち破り、イゾンツォ川流域を一時的に占領しました。この戦いはアーネスト・ヘミングウェイの小説『武器よさらば』でも描かれています。

一連の戦いでは、100万人以上のイタリア軍とオーストリア軍の兵士が命を落とし、この地域は悲劇の象徴となりました。

環境

イゾンツォ川は、「エメラルドの美しさ」と称されるほど、美しい水の色を誇ります。その透明度が高く、鮮やかなエメラルドグリーンの水面は、訪れる人々を魅了します。

生物

イゾンツォ川上流には、固有種のマスであるSalmo trutta marmoratus（マーブルトラウト）が生息しています。このマスは、アドリア海に注ぐ河川の固有種ですが、外来種の侵入により、現在では絶滅の危機に瀕しています。

イゾンツォ川は、その豊かな自然と歴史が共存する場所であり、今もなお多くの人々にその魅力を伝えています。

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