ヴェーラ・ザスーリチ

ヴェーラ・ザスーリチ：革命に生きた女性

ヴェーラ・イヴァノーヴナ・ザスーリチ（1849年8月8日 - 1919年5月8日）は、19世紀ロシアの革命家であり、その生涯は激動の時代を反映しています。彼女はナロードニキ運動に参加し、後にマルクス主義へと転向、社会変革のために奔走しました。

生い立ちと革命思想への目覚め

ザスーリチは、ロシア西部のスモレンスク県で小貴族の家庭に生まれました。幼くして父を亡くし、親族に預けられ育ちます。1866年に女学校を卒業後、サンクトペテルブルクの寄宿女学校に入学。姉の影響で革命思想に共鳴し、ナロードニキ運動に身を投じることになります。大学進学を諦め、判事の事務所で働く中で、農村の悲惨な状況を目の当たりにし、社会変革への思いを強くしました。

ナロードニキ運動への参加

1868年、ザスーリチはペテルブルクに戻り、裁縫や製本の仕事をしながら、夜間学校で労働者に読み書きを教えました。この頃、セルゲイ・ネチャーエフと出会い、彼の活動を支援しますが、ネチャーエフ事件に連座し逮捕、投獄されます。1871年に釈放されるも、再び拘束され、地方での行政流刑処分を受けます。拘禁生活の中で、ザスーリチは意識的な革命家へと変貌を遂げました。1875年には、キエフでナロードニキ組織「南のブンターリ（反乱者）」に参加。しかし、農民との軋轢から運動は行き詰まりを見せます。

トレポフ狙撃事件と亡命

1876年、ザスーリチはペテルブルクで「土地と自由」に参加。1877年、政治犯の鞭打ち事件をきっかけに、ペテルブルク特別市長官フョードル・トレポフ将軍を狙撃しました。この事件は世界的に報道され、ザスーリチは陪審裁判で無罪となります。しかし、再逮捕を恐れ、スイスへ亡命します。

マルクス主義への転向と「労働解放団」

亡命後、ザスーリチはマルクス主義に転向。カール・マルクスとの間でロシアの共同体に関する書簡を交わしました。1883年には、プレハーノフ、アクセリロードと共に、ロシア初のマルクス主義組織「労働解放団」をジュネーヴで結成します。ザスーリチはマルクスの著作をロシア語に翻訳し、マルクス主義の普及に貢献しました。1890年代にマルクス主義が広まる中、1898年のロシア社会民主労働党結成を後押しします。

「イスクラ」創刊とメンシェヴィキへ

1900年、ザスーリチはレーニンら新世代の革命家と協力し「イスクラ」を創刊しますが、後に意見の相違が生じます。1903年の社会民主労働党第2回党大会で、党がボリシェヴィキとメンシェヴィキに分裂すると、ザスーリチはメンシェヴィキに属し、指導者の一人として活動しました。

その後

1905年の第一次ロシア革命後、ザスーリチはロシアに帰国。しかし、革命への情熱は次第に冷めていきました。第一次世界大戦ではロシアの参戦を支持し、1917年の十月革命には反対しました。1919年、ペトログラードで生涯を閉じました。

参考文献

Jay Bergman. "Vera Zasulich: A Biography", Stanford University Press, 1983.
Barbara A. Engel, Clifford N. Rosenthal, eds. "Five Sisters: Women Against the Tsar", Routledge, 1975.

関連項目

ナロードニキ
メンシェヴィキ
チャイコフスキー団
土地と自由
人民の意志
19世紀後半のロシアの革命組織

外部リンク

Marxists.org Vera Zasulich Archive
Vera Zasulich Anarchist Encyclopedia
* "Lenin" by Leon Trotsky

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