ヴォイス・オブ・ザ・ハート

『ヴォイス・オブ・ザ・ハート』：カーペンターズの永遠の遺産

1983年、音楽界に衝撃が走りました。国民的アイドル、カーペンターズのシンガー、カレン・カーペンターの急逝です。そのわずか数ヶ月後、兄であるリチャード・カーペンターによって、カレンの遺作アルバム『ヴォイス・オブ・ザ・ハート』が発表されました。このアルバムは、カレンの最後のレコーディング音源や、それまでに発表されていなかった楽曲を収録した、まさにカーペンターズ史に残る作品となっています。

カレンの最後の歌声と、リチャードの深い愛情

カレンは1981年末から摂食障害の治療に専念していました。しかし、1982年4月21日、一時的に自宅に戻った際に、兄リチャードと共にレコーディングを行い、本作に収録されている「ナウ」を録音しました。この曲は、竹内まりやの楽曲「Heart to Heart」のカバーで、カレンの透き通るような歌声が印象的です。これが、カレンの生涯最後のレコーディングとなりました。

翌年2月4日、カレンは悲劇的に亡くなりました。深い悲しみに暮れる中、リチャードは彼女の遺志を継ぎ、この未発表曲を含むアルバムを完成させました。それは、単なる追悼盤ではなく、カレンの歌声を未来へと繋ぐ、リチャードからの愛のメッセージと言えるでしょう。アルバムには、カレンが唯一のソロアルバムで歌った「遠い初恋」のカーペンターズ・バージョンも収録され、彼女の才能の幅広さを改めて感じさせてくれます。

アルバムからのシングルとチャート成績

『ヴォイス・オブ・ザ・ハート』からは、「遠い初恋」と「ユア・ベイビー」の2曲がアメリカでシングルカットされました。「遠い初恋」はアダルト・コンテンポラリー・チャートで7位、「ユア・ベイビー」は12位と高い人気を博しました。これらの曲は、カレンの美しい歌声と、カーペンターズ特有のハーモニーが存分に見られる名曲として、現在も多くのリスナーから愛されています。

豪華参加ミュージシャンと多彩な楽曲

アルバムには、「ナウ」を始め、「輝く船出」「幸福過ぎて」「二人の想い出」「ジ・エンド・オブ・ソング」「オーディナリー・フール」「プライム・タイム・ラヴ」「愛は永遠に」など、バラエティに富んだ11曲が収録されています。各楽曲は、洗練されたアレンジと、カレンの卓越した歌唱力が際立つ、まさに珠玉の選曲です。

また、本作には数多くの著名なミュージシャンが参加しています。リチャード・カーペンター自身に加え、数々のセッションミュージシャン、そしてThe O. K. Choraleによるコーラスワークなど、豪華な布陣が作品を彩っています。ギター、ベース、ドラムス、パーカッション、サックス、フルート、ハープ、シンセサイザーなど、多様な楽器が織りなすサウンドは、リスナーをカーペンターズの音楽世界へと深く引き込みます。

多くのファンを魅了する不朽の名作

『ヴォイス・オブ・ザ・ハート』は、単なるアルバムを超えた、カーペンターズ、そしてカレン・カーペンターの軌跡と、音楽への情熱を凝縮した作品です。カレンの天性の歌声と、リチャードの卓越した音楽性、そして多くのミュージシャンたちの技が融合した、この不朽の名作は、これからも多くのファンを魅了し続けることでしょう。

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