ヴォストーク大隊

ヴォストーク大隊の概要

ヴォストーク大隊（батальон "Восток"）は、ロシア連邦軍第42親衛自動車化狙撃師団に属する特殊任務部隊で、チェチェン共和国に展開しています。「ヴォストーク」とはロシア語で「東」を意味し、その名称は同部隊が活動する地域からきています。

この大隊は、ロシアの特殊部隊であるスペツナズに属し、ロシア連邦軍の情報機関である参謀本部情報総局（GRU）の指揮下でも活動しています。元々は旧チェチェン・イチケリア共和国の国家親衛隊第2大隊がその前身として知られており、そのメンバーは800人から1500人程です。多くの隊員はグデルメス市出身で、地元の有力氏族であるヤマダエフ氏族の支持を受けていました。この氏族はチェチェン内で重要な役割を果たし、かつての独立派リーダーであるアスラン・マスハドフやアフマド・カディロフの支持基盤となっていました。

歴史的経緯

ヴォストーク大隊は、1994年から1996年にかけての第1次チェチェン戦争が始まる際に編成されました。その時、ヤマダエフ氏族の支持者で構成される国家親衛隊第2大隊が設立されたのです。1998年7月、この部隊はグデルメス市で発生したマスハドフ支持者とダゲスタンの過激派との衝突において重要な役割を果たしました。

1999年には第2次チェチェン戦争が勃発し、ヤマダエフ指揮官の下で防衛任務を担っていた第2大隊がアフマド・カディロフに従い、ロシア連邦に投降しました。その後、彼らは独立派と戦うためにロシア軍の指揮下に組み込まれることとなりました。2002年には、ヤマダエフ氏族の支持者から構成される特殊中隊が設立され、その中隊長にはジャブライル・ヤマダエフが任命されました。

ジャブライルは2003年にテロ事件により亡くなり、その後スリム・ヤマダエフが次の中隊長となりました。同年末には、その中隊が第42自動車化狙撃師団に改編され、「ヴォストーク大隊」となったのです。

活動と戦闘

ヴォストーク大隊は主にグデルメス市を拠点に、チェチェンの南部および南東部で活動しています。2004年初頭には外国人傭兵を標的とした作戦を実行し、アブデル・アジズ・アル=ガムディを排除しました。また、GRUの一部として諜報活動にも従事し、イスラム過激派に関する重要な情報を収集しています。

南オセチア紛争への関与

2008年の南オセチア紛争では、ヴォストーク大隊から2個中隊が派遣され、戦闘行動に参加しました。彼らはツヒンヴァリ児童解放やゴリに向けた進軍に参加し、この戦役では若干の負傷者が出ましたが、大きな損失は免れました。

終焉とその後

しかし、ヤマダエフ一族がカディロフ一族との政争に敗れたことにより、2008年にヴォストーク大隊は解体されることとなりました。以降の2014年には、ウクライナにおいて「ヴォストーク大隊」と名乗る親ロシア派武装勢力が新たに結成され、かつてのメンバーが関与したと言われています。この新たな大隊の設立は、ヤマダエフ氏族が主要な政争相手と見なされ、彼らを送り込んだとされるカディロフの意向によるものとも言われています。

ヴォストーク大隊の歴史は、チェチェンの情勢やロシアの軍事戦略を映し出す一面を持っており、今後の展開が注目される事例です。

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