ヴォルガ・ドイツ人自治ソヴィエト社会主義共和国

ヴォルガ・ドイツ人自治ソビエト社会主義共和国の歴史

ヴォルガ・ドイツ人自治ソビエト社会主義共和国（ASSR）は、ソビエト連邦内に設立された自治共和国であり、首都はエンゲリスです。この共和国は1924年1月6日に設立されましたが、1941年8月にはヨシフ・スターリン政権によって解体される運命にありました。

設立の背景と歴史的経緯

この自治共和国の設立は、1918年のロシア革命に由来します。当時、ロシアでは革命の波が広がり、非ロシア系民族が特別な地位を求める動きがありました。ヴォルガ・ドイツ人もその一部で、1918年10月29日に労働コムーネとして設立が宣言され、1924年に自治共和国の形態に昇格しました。自治政府の設立時には、恩赦が宣告されましたが、実際には適用された者はほとんどいませんでした。

この地域には、ドイツ系の入植者の末裔が多数居住しており、1897年の段階では約180万人が存在したとされています。彼らは、主にキリスト教ルター派の信者であり、ボリシェヴィキ政権との対立は避けられませんでした。1919年には、牧師たちが反革命分子とされ、強制収容所に送致されることもありました。

内戦とその影響

ロシア内戦の最中、ヴォルガ・ドイツ人は度重なる攻撃を受けました。また、1920年代にソ連が実施した民族政策に見られるように、国の文書におけるドイツ語の使用が奨励され、ドイツ民族の地位向上を図る動きもありました。しかし、その後、状況は一変します。

第二次世界大戦とその影響

第二次世界大戦が勃発すると、ヴォルガ・ドイツ人は「人民の敵」とされ、迫害の対象となりました。1941年8月28日、スターリンはヴォルガ・ドイツ人追放宣言を発し、共和国の解体と全ドイツ系住民の強制移住を決定しました。この際、ヴォルガ・ドイツ人はカザフスタンやシベリアへと移動させられ、戦後は再度の帰還を強いられました。

終戦後、スターリン死去以降は状況の改善が見られ、1964年にソ連政府がヴォルガ・ドイツ人の文化的および経済的発展を支援する方針を打ち出しますが、自治共和国の再建は行われることなく、ドイツ文化との同化が進みました。

現代におけるヴォルガ・ドイツ人の状況

ソビエト連邦崩壊後、ヴォルガ・ドイツ人はドイツへの帰国権を得ました。多くの人々が出国を試みましたが、言語的障壁が大きな問題として立ちはだかりました。1990年代後半には、ドイツ政府がドイツ語を理解しないドイツ系のロシア人の受け入れに制限を設けており、出国はますます難しくなっていきました。

人口と民族構成

ヴォルガ・ドイツ人ASSRの人口は、設立時点で数百万人に達しており、ドイツ系住民が大多数を占めていました。彼らは地域社会において重要な役割を果たし、独自の文化や伝統を育んできましたが、その歴史は常に政権の変遷と共に苦難を伴ったものでした。

ヴォルガ・ドイツ人自治ソビエト社会主義共和国は、短命でありながらも、その存在は歴史と文化の中で意味深い位置を占めています。

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