ヴラディーミル・ソフロニツキー

ヴラディーミル・ヴラディーミロヴィチ・ソフロニーツキィ（1901-1961）は、20世紀ソビエト連邦が生んだ最も個性的で偉大なピアニストの一人です。特に作曲家アレクサンドル・スクリャービンの芸術に深く傾倒し、その独特な演奏様式を受け継ぎ、作曲家の娘エレーナと結ばれたことでも知られます。生前は主にソ連国内で絶大な尊敬を集めましたが、国外での活動が限られたため、西側では長く知る人ぞ知る伝説的な存在でした。しかし、今日ではその貴重な録音を通じて、世界中の聴衆が彼の比類なき芸術に触れることができます。

幼少期から青年期

ソフロニーツキィは、物理学教師の父と貴族出身の母のもと、サンクトペテルブルクに生まれました。幼少期にワルシャワへ移り住み、アンナ・レベデヴァ＝ゲツェヴィチから最初のピアノの手ほどきを受け、9歳からは著名なアレクサンデル・ミハウォフスキに師事しました。1916年からペトログラード音楽院でレオニード・ニコラーエフに師事し、ディミトリー・ショスタコーヴィチやマリヤ・ユーディナらと同期として学びました。ニコライ・メトネルからも教えを受けています。音楽院在学中の1917年、彼はスクリャービンの長女、エレナと出会い、1920年に結婚しました。

キャリアの歩み

ピアニストとしてのキャリアは1919年の公開演奏会から始まりました。活動の場はほぼソビエト国内に限られ、生涯唯一の海外演奏旅行は1928年から1929年のフランス滞在のみでした。例外的に、1945年にはポツダム会談にて連合国首脳の前で演奏を披露する機会も持ちました。後進の指導にも熱心で、レニングラード音楽院、後にモスクワ音楽院で教授を務めました。

芸術性とレパートリー

ソフロニーツキィはスクリャービン本人とは面識がありませんでしたが、その芸術を深く理解し、未亡人からも正統な解釈者と認められました。彼の演奏は即興的で豊かなニュアンス、軽く柔らかいタッチが特徴で、スクリャービン自身のスタイルを彷彿とさせると評されました。スクリャービン作品の録音は今なお比類なき名演とされています。スクリャービンと並んで彼が深い愛情を注いだのはショパンであり、「ショパンへの愛情が全人生を貫いている」と語っています。レパートリーはバッハからメトネルまで幅広く、特にロシア音楽を重要な柱としていました。

評価と影響

ソフロニーツキィは西側では長く「幻」の存在でしたが、ソ連国内では疑いのない巨匠として絶大な尊敬を集めていました。スヴャトスラフ・リヒテルやエミール・ギレリスといった同時代の巨匠たちも彼を深く敬愛し、彼らによる賛辞は有名です。20世紀末まで西側では録音の入手が困難でしたが、近年復刻が進み、全世界で彼の演奏に触れることが可能となりました。録音に残された、シューマンに見られる捉えどころなく夢見るような表現、ショパンの繊細な解釈、スクリャービンの圧倒的な演奏は、極めて個性的で強烈なピアノの魅力を伝え、20世紀を代表するユニークな芸術家の一人としての記録となっています。

家族

娘のヴィヴィアナ・ソフロニツキーは、現在、クラヴィーア奏者として国際的に活躍しています。

結び

ヴラディーミル・ソフロニーツキィの芸術は、その極めて個人的な解釈と詩的な表現によって、時代を超えて多くの音楽愛好家を魅了し続けています。伝説的な存在であった彼は、残された録音を通じて、今なおその比類なき光彩を放っています。

もう一度検索