一〇式自由気球

一〇式自由気球

一〇式自由気球は、大日本帝国海軍が使用した航空機器の一つであり、通称「一号型自由気球」とも呼ばれています。この気球は、1921年度に海軍が藤倉工業から購入したイギリス製の自由気球を基にしています。

概要

1922年3月4日、海軍は購入した2基の自由気球にそれぞれ「第一号」および「第二号」と名付けました。この後、1924年4月21日には「一号型自由気球」としての正式な名称が定められました。さらに、1925年までに少なくとも6機の一号型自由気球が調達され、1927年5月12日には「一〇式自由気球」という兵器としての名称に改称されました。

これらの気球は、霞ヶ浦海軍航空隊や横須賀海軍航空隊に配備され、主に実用的な訓練目的で使用されました。その具体的な目的には、繋留気球の繋留索の切断に備えた着陸法や、飛行船の指揮・操縦法の習得が含まれていました。これにより、海軍は実戦に即した効果的な訓練を行うことができました。

構造と機能

一〇式自由気球の気嚢は球形で、ゴム引きされた綿布製です。気嚢の上部には引裂弁、頂部には手動弁があり、これらは吊籠から操作可能です。これにより、操縦時に必要な調整ができるようになっています。また、気嚢の下部には送気口があり、水素ガスを供給して浮上します。

吊籠は藤製で製造されており、中間索を介して気嚢の表面にある麻縄製の覆綱と接続されています。この吊籠には、操縦に必要なバラストや各種計測装置、地図、着陸に使う降着索などが装備されています。これにより、乗員は必要な情報を持ちながら、効率的に気球を操縦することが可能になっています。

諸元

一〇式自由気球の主な諸元は以下の通りです：

• - 気嚢直径: 11.6 m
• - 気嚢容積: 816.0 m³
• - 固定重量: 288 kg
• - 有効搭載量: 528 kg
• - 昇騰限度: 7,250 m（乗員1名の場合）
• - 乗員数: 数名

このように、一〇式自由気球はその特異な構造と機能を持ちながら、大日本帝国の航空戦力の一端を担っていました。

参考文献

• - 日本海軍航空史編纂委員会 編『日本海軍航空史（3） 制度・技術篇』時事通信社、1969年
• - 佐山二郎『日本の軍用気球 知られざる異色の航空技術史』潮書房光人新社、2020年
• - 『海軍制度沿革 巻九』海軍大臣官房、1940年

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