一の台

一の台：豊臣秀次の妻、その生涯と悲劇

一の台（いちのだい）は、永禄5年（1562年）に生まれ、文禄4年8月2日（1595年9月5日）に亡くなった安土桃山時代の女性です。彼女は、豊臣秀次の妻として歴史に名を残しています。父は、菊亭晴季です。

生涯

一の台は、初め三条顕実（三条実顕とは別人）に嫁ぎました。おみや（のちのお美屋御前）をもうけますが、間もなく顕実は亡くなります。未亡人となった一の台は、父・晴季によって豊臣秀次の妻として迎えられました。

「一の台」とは、「一の御台所」を意味し、正室を指す言葉です。一の台が秀次に嫁いだ頃、秀次の正室であった若政所（池田恒興の娘）がまだ存命していたという説があります。もしそうであれば、秀次は二人の正室を持っていたことになります。若政所と一の台は、若い方の正室と、一番の正室という意味合いだったと考えられます。

ただし、「若政所」という呼称は、父が関白である九条道房の正室・廉貞院などにも使用例が見られます。字義的には、「北政所より若い政所」とも解釈できます。

文禄4年（1595年）、秀次が豊臣秀吉に謀反の疑いをかけられ自害に追い込まれました。一の台もそれに連座し、8月2日に斬首されました。享年34歳。戒名は徳法院殿誓威大姉。

辞世は「ながらへて ありつるほどの 浮世とぞ 思へばなかる 言葉もなし」。この歌は、長く生きてきたこの世を振り返り、思い残すことは何もない、という意味が込められています。

人物

一の台は、当初、豊臣秀吉の側室となる予定でしたが、彼女が拒んだために秀次が自害させられたという説があります。しかし、これは定かではありません。

『絵本太閤記』には、次のような逸話が記されています。秀次は美貌の一の台を妻としましたが、その連れ子である13歳のおみやも美しかったため、これも側室として母娘共に寵愛しました。これを聞いた秀吉は、子供まで犯すとは人にあるまじき行為だと激怒し、一の台を最初に処刑してその墓を「畜生塚」と名付けたというのです。この逸話から、「畜生塚」または「悪逆塚」、転じて「畜生関白」という言葉が生まれたとされています。しかし、この話は根拠に乏しい俗説であり、小和田哲男は於宮が側室であったとは疑問だとしています。秀次を大逆非道の人物とする太閤記の脚色の1つが、人々に信じられるようになったに過ぎないと指摘しています。

一の台が登場するテレビドラマ

大坂城の女（1970年・関西テレビ 演：稲野和子）
春の坂道（1971年・ＮＨＫ大河ドラマ 演：岩本多代）
徳川家康（1983年・ＮＨＫ大河ドラマ 演：藤宏子）
司馬遼太郎の功名が辻（1997年・テレビ朝日 演：武田京子）

一の台は、悲劇的な運命を辿った女性として、様々なドラマで描かれています。

脚注

出典：

日本女性人名辞典
新國史大年表 第4巻

一の台の生涯は、戦国時代の女性の生き方、そして豊臣家の権力闘争を垣間見ることができる貴重な歴史の一コマと言えるでしょう。

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