春の坂道

大河ドラマ『春の坂道』

『春の坂道』は、1971年1月3日から12月26日まで放送されたNHKの大河ドラマで、これはシリーズの第9作品目です。主演は中村錦之助（後の萬屋錦之介）で、初回の視聴率が19.1%を記録し、最高視聴率は27.5%に達しました。平均視聴率は21.7%という成功を収めたこのドラマは、歴史的かつ文化的な背景を有しています。

この作品は、作家山岡荘八の書き下ろし小説『春の坂道』（後に『柳生宗矩』と改題）及び『徳川家康』を元に脚色され、杉山義法が脚本を担当しました。物語は、剣術家である柳生但馬守宗矩の波乱に満ちた人生と、彼が歩む険しい「春の坂道」がテーマです。物語の背景には、江戸時代初期に活躍した徳川家康、秀忠、家光の三代が存在し、剣禅一如を理念として描かれました。

企画・制作の背景

このドラマは『三姉妹』に続く大河ドラマオリジナル企画の第2弾としてスタートしました。山岡荘八が柳生一族について調査を行っているとという情報を受け、プロデューサーの吉岡利夫が企画を持ち込むことになります。山岡は柳生宗矩を「陰にいた人間」であり、「人間教育も行った平和思想者」という視点からドラマを構築しました。

主役の選定にはいくつかの意見がありましたが、最終的には中村錦之助が選ばれました。彼自身が売り込みを行うことでの決定であり、プロデューサーの計画と内部の事情が重なった形となりました。錦之助はその後も『柳生一族の陰謀』や『柳生新陰流』などで宗矩役を演じ続け、この役柄が彼の代表作となりました。

登場人物とその背景

このドラマには多くのキャラクターが登場しますが、特に柳生家の人物が中心です。主人公の柳生但馬守宗矩（中村錦之助）は江戸幕府初代の兵法指南役であり、剣術の達人です。彼は三代将軍家光から強い信任を受け、政治的な問題にも関わります。彼は明への出兵を画策する家光を、無刀取りの技をもって厳しく諌める姿が描かれています。また彼の家族も重要な役割を果たし、正室や後妻として共に生きた女性たちが彼を支えます。

精神的支柱とも言える柳生家の人物たちや、歴史的背景にある徳川家の面々も登場します。特に、徳川三代の将軍たちとの関わりが物語において重要な側面を成しています。

放送の影響と映像の保存

『春の坂道』の放送は多くの視聴者に深い印象を与えましたが、当時の映像の保存状況は厳しく、最終回のVTRはNHKに寄贈されるまで記録が残らなかったことが示されています。これはアーカイブの重要性を再認識させる出来事であり、現代においても関連する資料の保存や提供が呼びかけられています。

このように、『春の坂道』は時代背景を豊かに反映した作品であり、登場人物たちの人間模様や歴史的な出来事が交錯する中で視聴者を魅了しました。このドラマは日本の大河ドラマの中でもひときわ際立った存在であり、その後の作品にも少なからず影響を与えています。

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