一人っ子政策

中国の一人っ子政策：歴史、影響、そして政策転換

一人っ子政策は、中華人民共和国が1979年から2015年まで実施した人口抑制政策であり、夫婦一組につき原則として子供一人までとするものでした。この政策は、その後の中国社会に多大な影響を与えました。

歴史的背景

中国建国以前は、内戦や自然災害により人口増加が抑制されていました。しかし、建国後は社会が安定し、人口が急増。この急増に対応するため、政府は人口政策を打ち出す必要に迫られました。初期には人口増加を奨励する政策がとられましたが、1953年の人口調査で予想を上回る人口が判明し、政策は転換。計画出産が奨励されるようになりました。

その後、「大躍進」政策の失敗や文化大革命など、社会の混乱期を経て、1970年代に入ると周恩来首相の提唱により計画出産活動が再開されました。そして、1978年、胡喬木の発言を契機に、人口管理の必要性が高まり、一人っ子政策導入へとつながりました。

一人っ子政策の内容

一人っ子政策は、「晩婚」「晩産」「少生」「稀」「優生」を柱とし、憲法や婚姻法、各地区の計画出産条例によって支えられました。政策を推進するため、結婚年齢の引き上げや、一人っ子を奨励する優遇策（奨励金の支給、託児所への優先入学など）が設けられました。一方、政策に違反した場合には、超過出産費の徴収や昇給の停止などの罰則が科せられました。

ただし、第2子出産が例外的に認められる場合もありました。例えば、第1子が障害者の場合や、夫婦ともに一人っ子の場合などです。また、農村部や少数民族に対しては、都市部よりも緩やかな規制が適用されました。

一人っ子政策がもたらした問題点

一人っ子政策は、人口増加の抑制には一定の効果を発揮したものの、様々な問題を引き起こしました。高齢化の急速な進行、労働力不足、男女比の不均衡、そして一人っ子を失った家庭（失独家庭）の増加などです。

また、一人っ子として育った子供たちは、過保護に育てられがちで、わがまま、協調性がないと批判されることもありました。さらに、戸籍に登録されないまま成長する「黒孩子」と呼ばれる子供たちの存在も社会問題となりました。

政策の緩和と転換

このような問題を受け、中国政府は2013年に「夫婦どちらかが一人っ子ならば第2子の出産を認める」という緩和策を導入。しかし、利用率が低迷したため、2015年には一人っ子政策を全面的に廃止し、「二人っ子政策」へと移行しました。2021年には三人っ子政策へと更なる緩和が行われています。

廃止後の課題

二人っ子政策への移行後も、出生率は思うように伸びず、少子化に歯止めがかかっていません。教育費の高騰や育児の負担などが、出産をためらう要因となっていると考えられています。2020年には過去最少の出生数を記録。2022年には合計特殊出生率が1.09と、少子化が深刻化しています。人口減少が始まり、2023年にはインドに人口世界一の座を明け渡しました。

中国は今後、少子高齢化という課題にどのように対応していくのでしょうか。今後の政策動向が注目されます。

参考文献

若林敬子『中国　人口超大国のゆくえ』岩波新書、1994年。
早瀬保子・大淵寛 編『人口学ライブラリー8　世界主要国・地域の人口問題』』原書房、2010年。
辻康吾・加藤千洋 編『原典中国現代史　第4巻社会』岩波書店、1995年。
その他、朝日新聞の記事など

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