合計特殊出生率

合計特殊出生率（TFR）について

合計特殊出生率（TFR）とは、一人の女性が生涯に産む子どもの数を示す指標です。特に、15歳から49歳までの年齢層における女子の年齢別出生率を合計して算出されます。TFRの値が人口を維持するために必要な水準（2.07）を下回ると、次世代の人口は自然減少に向かいます。

定義

TFRを計算する際には、以下の数式を用います。

$$
TFR = \sum_{x=15}^{49} \frac{f(x)}{g(x)}
$$

ここで、$f(x)$は年齢$x$の女性が1年間に産む子どもの数を示し、$g(x)$は年齢$x$の女性の総数を示します。この計算により、特定の年における女性の出生状況を反映させ、一人の女性が生涯に産む子どもの推定値を得ることができます。ただし、出生のライフスタイルが世代ごとに異なるため、この値は必ずしも正確に「一人の女性が生む子ども数」を表すものではありません。

コーホート合計特殊出生率

コーホート合計特殊出生率は、同じ年代に属する女性が産む子どもを元に算出される指標です。この数値は、特定のコーホートが50歳に達するまで確定しないため、分析には時間を要します。

人口置換水準

人口を維持するための合計特殊出生率は「人口置換水準」と呼ばれます。この数値は、女性が死亡せずに出産することを前提にしており、通常は生まれる子どもの男女比が1対1と仮定されます。実際には、出産可能年齢や男女比などの要因から、先進国ではTFRが2.08程度必要だとされています。

各国の合計特殊出生率

特に先進国の合計特殊出生率は、地域や時期によって大きく異なります。2021年には、先進国でTFRが2.1を超えた国はイスラエルのみであり、その背景には独自の出産支援策が存在します。日本においては、戦後のベビーブームを経て、出生率は徐々に減少し続けてきました。特に1989年には1.57という低出生率が明らかとなり、社会問題として取り上げられるようになりました。

具体的には、厚生労働省によるデータによれば、日本の合計特殊出生率は次第に減少し、2005年には1.26まで落ち込みましたが、2015年には1.45を記録しています。しかし、2019年には出生数が86万5234人に落ち込み、合計特殊出生率も1.36と再び低下しています。

EU圏内では2020年時点で合計特殊出生率は1.50であり、フランスや北欧諸国で比較的高い値を示していますが、依然として低出生率の問題は各国での共通課題です。特に、白人夫婦の出生率の低下が懸念されており、移民とその子どもたちが国の出生率に寄与している状況も見られます。

極低出生率

「極低出生率」とは、合計特殊出生率が1.3以下の状態を指します。この現象は特に東欧、南欧、東アジア、中南米で顕著です。近年では、中国や韓国でのTFRが著しく低下し、特に韓国は2023年に0.72という歴史的な低さを記録しました。これらの国々では人口減少が深刻な問題となっており、今後の社会構造や経済に大きな影響を及ぼすと予想されます。

結論

合計特殊出生率は、国や地域の人口動態を示す重要な指標であり、その動向は社会のさまざまな側面に影響します。出生率の低下は経済的、社会的な課題を引き起こすため、各国は対策を講じる必要があります。特に移民政策や家族支援策を見直すことが求められている今、国際的な視点から出生率問題に向き合うことが重要です。

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