一寸法師 (江戸川乱歩)

一寸法師

概要

『一寸法師』は、江戸川乱歩によって書かれた中編小説で、1926年から1927年にかけて『東京朝日新聞』と『大阪朝日新聞』に掲載されました。この作品は、乱歩の代表作の一つであり、本格探偵小説としての位置づけがあります。ただし、乱歩は自身が満足できる作品ではなかったと述べており、特に長編に挑むことに不安を覚え、ストーリーが引き締まらず、何度も連載を休載する羽目になりました。『地獄の道化師』と並ぶ微妙な分量で掲載が行われ、大正天皇の崩御など、社会情勢の影響で掲載日程にずれが生じました。

また、連載期間中に『パノラマ島奇譚』と並行して執筆され、完成後、乱歩は小説の執筆を一時中断するほどの影響を受けています。とはいえ、この作品は後の「通俗長編もの」の先駆けともなり、映画化もされるなど多くの反響を呼びました。

あらすじ

物語は、浅草公園での出来事から始まります。小林紋三という男性が、背の低い男が落とした風呂敷包みから人間の手足がこぼれ落ちる瞬間を目撃します。興味を惹かれた彼は男を追いかけ、彼が養源寺へ入るのを見ます。しかし、翌日訪れた養源寺の住職は知らないとのこと。小林は失踪事件に関わる実業家の山野大五郎とその妻・百合枝に出会い、探偵の明智小五郎を紹介することになります。

明智は百合枝からの依頼を受け、早速山野邸の調査に乗り出します。体調が優れない中、彼は家の中を徹底的に捜索し、ピアノの中から三千子のものと思われる髪の毛とヘアピンを発見。さらには使用人の証言から、三千子があらかじめピアノに隠され、その後にゴミと共に外へ運び出された可能性を見抜きます。

その後、東京の百貨店で起こった奇妙な事件で、呉服売り場の飾り人形の手が人間の女性の手にすり替えられるという出来事が続発。明智はこれを追い、指紋を照合すると、三千子のものと一致します。さらに、三千子のものと思われる手が川に送られていることも明らかに。百合枝も怪しい男と密会する様子を小林が見つけ…このように物語は複雑に絡み合いながら進行します。

登場人物

• - 小林紋三：明智の友人であり、百合枝に思いを寄せる。
• - 山野大五郎：実業家で三千子を心配する父。
• - 山野百合枝：大五郎の後妻で三千子の継母。
• - 山野三千子：19歳の娘。恋人との関係が影響する。
• - 明智小五郎：名探偵、事件の調査を行う。

映画

この作品は1927年に初めて映画化され、連合映画芸術家協会により製作されました。乱歩の作品としては初の映像化であり、多くの人々によって親しまれるようになりました。その後も1948年と1955年に再度映画化され、名作として語り継がれています。

脚注

『一寸法師』に関する文献は国立国会図書館のデジタルコレクションや青空文庫で確認できます。本作が持つ文学的価値や影響を考察することは、現代の読者にとっても大きな意義があります。

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