一年志願兵 (ドイツ)

一年志願兵（ドイツ語: Einjährig-Freiwilliger）とは、主に19世紀のプロイセン王国からドイツ帝国にかけて存在した、独自の志願兵制度を指します。当時の一般的な徴兵制度とは一線を画し、この制度を利用する志願兵は、入営中の食費、装備、被服など、兵役に要する様々な費用を自費で賄うという大きな特徴がありました。

その代わりに、通常の徴兵による兵役期間（例えばプロイセンでは満期3年）を大幅に短縮することが可能となり、さらに、一年間の兵役期間を満了した者には、予備役の将校となる資格を得る道が開かれていました。

この制度は、1817年にプロイセン王国で創設されたのが始まりです。その後、1871年のドイツ帝国成立に伴い、プロイセンの制度はそのままドイツ帝国軍に引き継がれました。普仏戦争（1870-1871年）でプロイセンが勝利を収め、その軍事制度が注目されると、バイエルン王国（ドイツ帝国内）、そして国外のフランス、ロシア、オーストリア＝ハンガリーといった国々でも、プロイセンの制度を参考に同様の志願兵制度が導入されました。さらに、明治時代の日本にも、ドイツ軍制を範とする中で類似の制度が持ち込まれることになります。これらの国々のうち、オーストリアにおいては、2015年時点でも一年志願制が存続していることが知られています。

プロイセンにおける一年志願兵制度は、主に25歳までの健康な男性に適用されました。ただし、この制度を利用したのは、実際にはアビトゥーア資格を持つ者など、高等教育を受けた層が大部分を占めていました。彼らにとって、これは当時の長期にわたる徴兵期間を回避するための有効な手段であり、また、費用を自己負担できるだけの経済力を持つ富裕層にとっても利用しやすい制度でした。

志願者は、ある程度の範囲内で入営する部隊や兵科を選択する自由が与えられていましたが、繰り返しになりますが、兵役中に発生する一切の費用を自己負担することが義務付けられていました。この制度は単に兵役期間を短くするというメリットだけでなく、経済力や学歴のある者が将校という社会的地位を得る機会を提供するものとして捉えられていました。当時のドイツ社会において、将校の資格を有することは一種の社会的ステータスであり、一年志願兵出身であること自体が、高い学識や家柄を裏付ける証と見なされ、広く認知されていたのです。

一年間の兵役期間が終わりに近づいた志願兵のうち、予備役将校への昇進を希望する者は、まずその適性を審査されます。審査に合格した者は伍長に昇進し、残りの兵役期間中に将校となるための特別な教育課程を履修しました。一年間の兵役期間満了後、彼らは予備役将校候補者として軍から除隊し、郷土予備軍に編入され、将来的な予備役将校への昇進機会を待つことになります。

一方、予備役将校への昇進を特に希望しない一年志願兵は、下士官適任者として軍から除隊しました。彼らは通常、除隊後6年間の後備役義務を負うことになっていました。

具体例としては、哲学者フリードリヒ・ニーチェが挙げられます。彼はライプツィヒ大学に在学中だった1867年に、一年志願兵としてプロイセンの砲兵師団に入隊しました。しかし、翌1868年3月、落馬事故により大怪我を負ったため、兵役を続けることが困難となり除隊し、大学に復学しています。

参考文献：
Brockhaus, The Encyclopedia in 24 volumes (1796–2001), Volume 6: 3-7653-3666-1, page 172

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