一式双発高等練習機

一式双発高等練習機の概要

一式双発高等練習機は、第二次世界大戦時、大日本帝国陸軍に属する練習機で、試作名はキ54です。本機は、立川飛行機によって開発され、連合軍において「Hickory」というコードネームが付けられました。

開発の背景

1939年、日本陸軍は立川飛行機に対し、九五式二型練習機の後続機となる多目的な高等練習機の製作を依頼しました。その際の条件として全金属製の双発機であること、引込脚式を採用すること、正副操縦者に加え、訓練生や教官を含めて6～7名が搭乗できるスペースが求められました。

同社は過去の経験を活かし、1940年6月には試作機が初飛行を達成し、審査に合格したことから、1941年7月には正式に一式双発高等練習機として採用されました。この機体は、エンジンの信頼性や耐久性に優れた性能を持ち、各種訓練に対応できる広い機内スペースが特長でした。

機体の特性と運用

一式双発高等練習機には、甲型（キ54甲）や乙型（キ54乙）などのさまざまなバリエーションが存在し、それぞれ操縦や航法訓練、通信や爆撃、射撃訓練など、用途に応じた設計が施されました。さらに、丙型（キ54丙）や丁型（キ54丁）も生産され、連絡機や輸送機としても活用されました。

日本国内の航空学校や航空隊、司令部飛行班などで幅広く使用され、丙型は空挺部隊の降下練習にも利用されました。また、少数機が満州国軍への要人輸送用としても供給されました。

生産と戦後の利用

一式双発高等練習機は、1945年6月までに1,342機が生産されました。戦争末期には特攻機としての改造も考えられましたが、終戦を迎えることとなりました。戦後は連合国軍の指示により、輸送機として活用され、また国共内戦や第一次インドシナ戦争においても運用されました。

現在、現存する機体については、2012年に青森県の十和田湖から引き揚げられた製造番号5541番の機体が唯一となっており、状態が良好で当時の塗装も残されています。この機体は青森県立三沢航空科学館で展示されており、重要航空遺産に認定されています。さらに、中国の北京航空航天大学およびオーストラリアのキャンベラにあるオーストラリア戦争記念館でも関連する機体の部品が存在しています。

性能

一式双発高等練習機は、全長11.94m、全幅17.9m、全高3.58mというスペックを持ち、エンジンは2基の日立ハ13甲空冷9気筒エンジン（各515HP）を搭載していました。最大速度は367km/h、航続距離は960km、実用上昇限度は7180mであり、乗員は5〜9名を収容することができました。また、武装に関しても、型によって異なりますが、旋回機関銃や航空爆弾を搭載することが可能でした。

このように一式双発高等練習機は、訓練機としての機能に留まらず、さまざまな用途に対応した非常に有用な航空機であったことがわかります。

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