一志太夫

一志太夫（いちしたゆう）は、越後国（現在の新潟県）および出羽国（現在の山形県・秋田県）に存在した皇大神宮（こうたいじんぐう、または、すめおおみかみのやしろ）の神官の名跡です。

歴史

一志太夫のルーツは、伊勢神宮の神官にあり、伊勢国一志郡（現在の三重県一志郡）の出身であったと伝えられています。弘治3年（1557年）、越後国魚沼郡堀之内（現在の新潟県魚沼市）に伊勢神宮から皇大神宮を勧請し、皇大神宮を創建したとされています。その後、御師（おし）として越後に移り住んだとされています。ただし、この皇大神宮は、一説には南北朝時代頃には既に創設されていたとも言われています。

安土桃山時代には、越後を支配していた上杉氏の庇護を受けていたと考えられています。上杉景勝の時代の『文禄三年定納員数目録』には、上杉家重臣である直江兼続配下の与板衆に組み込まれており、兵役を負担していたことが記録されています。また、熊彦右衛門という代官を神宮に置いていました。

上杉氏が会津（現在の福島県）、米沢（現在の山形県）へと移封されるたびに、一志太夫もそれに従いました。神宮には代官の長沼宮内をたびたび派遣していましたが、寛文8年（1668年）には、米沢藩主の上杉綱憲の命により、米沢城の東にある福田村に皇大神宮を移転させました（現在の山形県米沢市立町の皇大神社）。この皇大神社への奉仕は明治維新まで続くことになります。

しかし、明治政府の神道政策によって御師制度が廃止されるに伴い、明治4年（1871年）に一志太夫は伊勢へと帰郷し、神社も荒廃してしまいました。

現在

魚沼市の皇大神宮、米沢市の皇大神社はそれぞれ地域の人々によって守られています。

参考文献

長谷川勝義『藪神衆の苦悩と誇り』

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