一畑電気鉄道デハ20形電車

一畑電気鉄道デハ20形電車

一畑電気鉄道デハ20形電車は、一畑電気鉄道（現・一畑電車）で活躍した電車です。1951年（昭和26年）から1953年（昭和28年）にかけて、団体輸送を中心とした観光需要の増加に対応するため、デハ1形3両とデハニ50形1両をナニワ工機で改造して登場しました。

改造と特徴

デハ1形・デハニ50形からの主な改造点として、座席がロングシートから長距離輸送に適したセミクロスシートに変更されました。また、客用扉は両端の2箇所に配置され、制御器には弱め界磁が設けられ、最高速度が75km/hから85km/hに向上しました。

4両は、外観はほぼ同一で、両端に扉があり、扉間に16個の狭窓が並んでいましたが、種車の違いから、デハニ50形を改造したデハ21と、デハ1形を改造したデハ22・23・24では、細部の寸法が若干異なっていました。

塗装の変遷

登場当初の塗装は茶色（マルーン）一色でしたが、1950年代後半には窓から上半分がクリーム色、下半分が赤色に変更されました。1960年代に入ると、西武鉄道から自動扉を装備した60系（初代）・70系が入線したため、手動扉車を示すオレンジ色に白帯の塗装に変更されました。1970年代以降は、手動扉車でありながら自動扉車と同じクリーム色と青帯の塗装となり、廃車までこの塗装で活躍しました。その他、パンタグラフや前照灯の交換、台車のコロ軸受化、窓枠のアルミサッシ化なども行われました。

運用

一畑電鉄初の半鋼製セミクロスシート車として、線内の主力車両となり、1957年（昭和32年）以降は西武鉄道から購入したクハ100形（2代）と両数が同じだったため、クハ100形（2代）と連結した2両編成で運行されることが多くなりました。1960年以降は60系（初代）や70系の入線により、急行運用に就く機会は減少し、普通列車での運用が中心となりましたが、朝夕ラッシュ時の急行や正月の臨時特急などにも使用されました。

廃車と保存

廃車は1981年（昭和56年）に80系が入線したことで余剰となったデハ24から始まり、2100系入線直前の1994年（平成6年）6月にデハ21が、3000系が入線した1996年（平成8年）12月にはデハ22・23がクハ100形（2代）や80系などとともに廃車され、北松江線から旧型車の定期運用がなくなりました。

デハ23は、1996年の廃車後、茶色に一畑電鉄の旧社紋を付けた1950年代前半の姿に復元され、北松江線の線路に沿って平田市立図書館（当時）の敷地に保存されました。しかし、老朽化と用地の問題から、2004年には解体の話も持ち上がりましたが、最終的に島根県で保管されることになりました。現在では、片側の前頭部のみが残され、2007年3月に開館した島根県立古代出雲歴史博物館で、かつての北松江駅を再現した改札口と組み合わせて展示されています。運転席には運行風景が、側面窓には昭和30年代の映像が映し出され、当時の様子を伝えています。

また、デハ22・23の一部部品は、廃車後デハ1形・デハニ50形の補修用として再利用されました。

参考文献

『鉄道ピクトリアル』 鉄道図書刊行会
1968年7月増刊号（通巻212号）私鉄車両めぐり第9分冊 p.86 - 95
1992年5月号（通巻555号）鈴木大地 「神話の国にベテラン電車を訪ねて - 一畑電気鉄道」 p.66 - 71
根宜康広 『一畑電車がゆく 【松江〜出雲】神々の棲まう里を旅する』 今井書店 1999年 ISBN 4-89678-040-X
* 寺田裕一 JTBキャンブックス『ローカル私鉄車輌20年 西日本編』 JTB刊 2002年2月 ISBN 4-533-04102-7

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