一角獣を抱く貴婦人

一角獣を抱く貴婦人

『一角獣を抱く貴婦人』は、1510年頃にイタリアの名画家ラファエロ・サンツィオによって制作された肖像画です。この絵画は、美しい女性が膝の上に一角獣を抱き、その視線を遠方に向けているシーンを描写しています。女性の髪は美しい金色で、目は鮮やかな青色をしています。彼女が身に着けている衣服は、当時の流行を反映したガムッラと呼ばれるものであり、豪華な装飾品が特徴的です。

絵画の特徴

女性はピラミッド型の構図で描かれ、その背後には大きな欄干が配置されており、左右には円柱が見えます。この構図は、レオナルド・ダ・ヴィンチの有名な『モナ・リザ』からの影響を強く受けています。特に、背後の欄干や円柱の配置は、ダ・ヴィンチの作品と類似しています。

女性は、結婚した女性が描かれる奉納画の多くに見られる指輪をはめていない点でも珍しいです。このことから、彼女が結婚前の未婚女性であることが示唆されています。女性が抱いている一角獣は、浄化の象徴であり、純潔のシンボルでもあります。一角獣は古代の伝説において、純粋な若い女性にのみ捕獲されることができるとされていました。

加筆と修復の歴史

この絵画は、17世紀半ばに行われた加筆により聖カタリナとして再解釈され、一角獣は聖カタリナのシンボルである車輪とナツメヤシの葉に変更されました。しかし、1934年から1935年にかけて行われた修復作業によって、加筆が除去され、原作の形状が明らかにされました。さらに、1959年にはX線による調査が行われ、一角獣は最初は犬として描かれていたことが判明しました。この犬もまた、結婚の忠誠を表す象徴でしたが、最終的には一角獣に置き換えられました。

モデルに関する説

この作品のモデルについては、さまざまな仮説があります。一説には、フィレンツェの商人アニョーロ・ドーニの妻であるマッダレーナ・ストロッツィであるとも言われています。また、別の説では、ロドリーゴ・ボルジアの愛人であったジュリア・ファルネーゼではないかとも考えられています。ジュリアは、ファルネーゼ家のシンボルが一角獣であることから、絵画のモデルとされた可能性もあります。

絵画の所蔵先

この作品は、アルドブランディーニ家に伝わり、その後ボルゲーゼ家のコレクションに加わりました。現在はローマのボルゲーゼ美術館に所蔵されており、美術の愛好者にとって魅力的なスポットとなっています。

まとめ

『一角獣を抱く貴婦人』は、ラファエロの才能を示す素晴らしい作品であり、その構図や描写は美術史において重要な位置を占めています。一角獣という神秘的な存在と、女性の純粋さを結びつけたこの肖像画は、見る者に深い印象を与え続けています。

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