ジュリア・ファルネーゼ

ジュリア・ファルネーゼ：美貌と権力に翻弄された女性

ジュリア・ファルネーゼ（1474年 - 1524年）は、その美貌から「麗しのジュリア（Giulia la bella）」と呼ばれ、教皇アレクサンデル6世の愛妾として知られる人物です。ロレンツォ・プッチは彼女を「最上の目の保養」と評し、チェーザレ・ボルジアも彼女の黒い瞳に魅了されたと伝えられています。彼女の生涯は、当時の政治的駆け引きと愛憎劇に深く関わっていました。

生い立ちと家族

ジュリアは、ラティウム地方のカニーノで、モンタルト・ディ・カストロの領主ピエルルイージ・ファルネーゼとジョヴァンナ・カエターニの娘として生まれました。母方のカエターニ家は、教皇ボニファティウス8世を輩出した名門です。彼女には4人の兄弟姉妹がおり、長兄のアレッサンドロは後に教皇パウルス3世となり、次兄のバルトロメオは父の跡を継いでモンタルトの領主となりました。弟のアンジェロも領主であり、妹のジローラマがいました。

結婚と愛人関係

1489年、15歳でオルシーノ・オルシーニと結婚しました。オルシーノの母アドリアーナ・デ・ミラは、教皇庁国務副長官ロドリーゴ・ボルジア枢機卿（後のアレクサンデル6世）の遠縁にあたり、野心的な女性でした。オルシーノは自信のない男だったとされています。ジュリアがいつアレクサンデル6世の愛人となったかは正確には不明ですが、姑のアドリアーナは、息子の出世のためにジュリアの不倫を黙認しました。1493年までに、ジュリアはバチカン近くの宮殿に移り住み、教皇の娘ルクレツィア・ボルジアと親友になりました。教皇とジュリアの関係は公然の秘密となり、彼女は「教皇の淫婦」などと呼ばれました。この愛人関係により、ジュリアの兄アレッサンドロは枢機卿の地位を得たため、「スカートの枢機卿」と揶揄されました。

娘ラウラと教皇の怒り

ジュリアは娘ラウラを産みましたが、その父親がオルシーノかアレクサンデル6世かは不明です。ジュリアは娘の父親を教皇であると主張し、将来の結婚を有利にしようとした可能性があります。1494年、弟アンジェロを見舞った際、教皇の怒りを買い、一時的にローマから遠ざけられました。しかし、最終的に教皇の圧力によりジュリアはローマに戻り、愛人としての関係を続けました。

その後の人生

1499年頃まで教皇の愛人であったジュリアですが、年齢を重ね、教皇の寵愛を失ったと考えられています。その後、夫オルシーノが亡くなり、ジュリアはアレクサンデル6世がオルシーノに与えたカルボニャーノに移住しました。1503年に教皇が亡くなった後、1505年に娘ラウラの結婚式のためにローマを訪れました。ラウラは、アレクサンデル6世の後を継いだ教皇ユリウス2世の甥ニッコロ・デッラ・ローヴェレと結婚しました。ジュリアはその後も恋愛を楽しみ、下級貴族と再婚しました。1506年にはカルボニャーノの支配者となり、精力的な統治者として有能な行政手腕を発揮しました。1522年にローマに戻り、1524年に50歳で亡くなりました。死因は不明です。10年後、兄アレッサンドロが教皇パウルス3世となりました。

参考文献

Bellonci, Maria. The Life and Times of Lucrezia Borgia
del Vecchio, Edoardo (1972). I Farnese. Rome: Istituto di studi romani
* Spinosa, Antonio (1999). La saga dei Borgia. Milan: Mondadori. ISBN 88-04-48662-7

もう一度検索