丁半

丁半：江戸時代のサイコロ賭博

丁半（ちょうはん）は、江戸時代中期から後期にかけて盛んに行われた、サイコロを使った賭博です。シンプルなルールながら、独特の用語や賭博場の雰囲気、階層的な組織構造など、興味深い側面を持っています。この記事では、丁半の遊び方から歴史、そして賭博場を支えた人々の役割まで、詳しく解説します。

遊び方

丁半は、2つのサイコロの出目の和が偶数か奇数かを予想して賭けるゲームです。偶数を「丁」、奇数を「半」と呼びます。茶碗のような形のツボにサイコロを入れ、振って出た目の和が丁か半かを予想し、賭け金をかけるのです。

賭けは、専用の台である「盆茣蓙（ぼんござ）」の上で行われました。盆茣蓙の中央には、賭け金を置く場所があり、客は丁か半のどちらかに賭け金を置きます。賭け金は、当初は木や竹、紙でできたコマ札でしたが、後に現金が直接使われるようになりました。

勝負の流れは以下の通りです。

1. 準備: ツボ振りがサイコロをツボに入れ、盆茣蓙の上に伏せます。
2. 賭け: 客は丁か半かを予想して、賭け金を置きます。
3. 判定: 中盆が賭けの募集を締め切り、ツボ振りがツボを開けて出目を確認します。
4. 精算: 中盆が勝者と敗者を決めて、賭け金を精算します。

賭博場の構造と役割

丁半が行われる賭博場は「鉄火場」と呼ばれ、そこには様々な役割を持った人々がいました。

貸元: 鉄火場の責任者。
中盆: 審判員兼進行係。勝負の流れを司り、賭け金の精算も行います。
ツボ振り: サイコロを振る人。
客: 賭けに参加する人々。

これらの役割は、階層的な徒弟制度に基づいており、博徒社会の厳格な秩序を反映していました。特に、下っ端の博徒を「三下」と呼んだことから、現代でも「三下ヤクザ」という言葉が残っています。

用語と出目

丁半には独特の用語が多く存在します。例えば、特定の出目は特別な呼び名を持ち、ゾロ目は「ピンゾロ」、「カントオシ」、「ニトオシ」、「ピントオシ」などと呼ばれていました。また、「ビリ」と呼ばれる特定の出目が出ると、特別なルールが適用されることもありました。

テラ銭とブタ

各勝負ごとに徴収される手数料を「テラ銭」といい、これは親分の収入源でした。特定の出目（ブタ）が出た場合は、テラ銭の取り分が変わるなど、複雑なルールが存在しました。ブタの扱いについては地域差があり、関東では採用しないケースが多かったようです。

歴史と文化的背景

丁半は江戸時代後期に流行し、庶民の娯楽として広く親しまれていました。しかし、賭博であるため、社会問題にもなりました。「盆を敷く」という表現は、丁半が盆茣蓙の上で行われたことに由来しています。また、「一か八か」という慣用句は、丁半に由来するという説もありますが、これは誤った解釈です。

まとめ

丁半は、一見シンプルなサイコロ賭博ですが、その背景には江戸時代の博徒社会の構造や独特の文化が深く関わっています。この記事を通して、丁半の面白さ、そして江戸時代の社会の一端を感じ取っていただければ幸いです。

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