七帝柔道記

七帝柔道記 - 増田俊也の青春物語

『七帝柔道記』は、増田俊也が北海道大学柔道部での経験を基に書き上げた青春小説です。本作は、戦前の寝技重視の高専柔道が受け継がれている七帝柔道を舞台にし、昭和の時代背景の中で学生たちの成長と友情を描いた、かなり自伝的な要素が強い作品となっています。

背景と構成

物語は、名古屋の旭丘高等学校から、七帝柔道の拠点である北海道大学に入学する増田俊也の試練と成長の軌跡を中心に進みます。北海道大学、東北大学、東京大学、名古屋大学、京都大学、大阪大学、九州大学という七大学で構成される旧帝国大学の柔道部が抱える伝統と衰退を背景に、増田が実際に体験した仲間たちとの絆の形成が描かれています。

物語の中で、増田は井上靖の作品『北の海』に触発され、七帝柔道を目指す決意を固めます。しかし、憧れを抱いて入部した北大柔道部は、かつての栄光とは裏腹に、実績が乏しいチームだったのです。部員たちは連続して七帝戦で最下位を記録しており、逆境に立たされます。

試練と友情

物語は、厳しい練習や思わぬ敗北を通じて、仲間との絆がどれだけ深まってゆくかを描写しています。主将の金澤裕勝は、チームが弱体化する中でも懸命にリーダーシップを発揮し、仲間たちが懸命に練習に励む姿勢が特徴的な場面です。やがて、後任の和泉唯信主将のもとで、北大柔道部はさらなる努力と試行錯誤を重ね、過酷な練習環境に身を置いていきます。

増田たちは、夢を持ちながらも、「なぜこんなに苦しい練習をしているのか」と悩む姿がリアルに描かれており、読者は共感を覚えることでしょう。彼らの成長とともに、友情や恋愛もあり、青春の真っ只中で奮闘する姿は感動を呼び起こします。

続編と展開

続編の『七帝柔道記II 立てる我が部ぞ力あり』では、リーダーが交代し、状況がさらに厳しくなるなか、北大柔道部が直面する新たな挑戦が描かれています。新主将の後藤孝宏が苦境を打破しようと努力し、仲間たちと共に新たな局面を迎える様子が印象的です。

影響と評価

この物語には、実在の人物や出来事が多く取り入れられ、リアリティと感動が溶け合っています。また、増田は作中で登場人物たちについて評論や対談を行い、彼らにさらなる深みを持たせていくことで広がりを持たせています。戦前の井上靖の自伝的な作品からインスパイアを受けたこの小説は、青春小説の傑作として評価されています。

『七帝柔道記』は、単なるスポーツ小説に留まらず、成長と友情をテーマにした心に響く物語です。

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