高専柔道

高専柔道とは

高専柔道は、旧制高等学校、大学予科、旧制専門学校で盛んに行われていた寝技中心の柔道です。1898年、第一高等学校と第二高等学校の柔道部の対抗戦が始まりとされています。講道館柔道とは異なり、立ち技から直接寝技に引き込むことが認められ、寝技での優勢勝ちがないなど、独自のルールが特徴です。この独特なルールの中で、寝技の技術が非常に発達しました。

高専柔道のルール

高専柔道のルールで最も大きな特徴は、寝技で膠着状態になっても「待て」がかからない点です。そのため、延々と寝技の攻防が続くことが珍しくありません。ただし、1934年の書籍には「足搦みの形になり変化なきときは之を別れしむ」とあり、完全に膠着した状態は解消されていたようです。また、「場外」という概念がなく、試合場外に出てしまうと、主審の判断で試合場中央で同じ体勢で再開となります。

さらに、通常の柔道では投技から寝技に移行しますが、高専柔道では寝技への引き込みが認められています。そのため、試合開始直後から寝技になることも多くあります。もちろん、投技での一本勝ちも認められています。

このような寝技中心のスタイルになった背景には、大人数団体戦という形式上、初心者でも比較的短期間で習得しやすい寝技に重点が置かれたことが挙げられます。また、寝技は立技に比べて体格差や運動神経に左右されにくいという側面も、寝技が重視された理由の一つでしょう。

技術革新

高専柔道では、寝技の技術が非常に発達し、多くの新しい技が開発されました。現在、講道館柔道やブラジリアン[[柔術]]で用いられている三角絞めも、高専柔道から生まれた技術の一つです。足挟み（ヘッドシザース）は禁止されていましたが、そのルールの中で、三角絞めのような新しい技が生まれました。また、講道館柔道で禁止されている足関節技や膝十字固も、高専柔道で開発された技術です。

これらの技術は、学生たちが互いに切磋琢磨する中で生み出され、大会では毎年新しい技術が披露されていました。その技術レベルは非常に高く、今日の柔道や格闘技に大きな影響を与えています。

1941年以降、講道館柔道で寝技への引き込みが禁止された背景には、高専柔道出身者の活躍がありました。特に、六高の選手が警視庁との試合で圧勝したり、講道館の試合で寝技に引き込んで次々と勝ち進んだことが、講道館のルール変更につながったとされています。

高専柔道の歴史

高専柔道は、1898年、第一高等学校と第二高等学校の対抗戦から始まりました。その後、全国の高等専門学校に広がり、全国大会も開催されるようになりました。1914年には、最初の高等・専門学校柔道大会となる第1回全国高専柔道大会が開催されています。1920年には、六高が警視庁との試合で勝利し、高専柔道の強さを示しました。

高専柔道は、旧制高校や帝大の学生たちによって盛んに行われ、多くの人材を輩出しました。政財界、文化界にも永野重雄、正力松太郎、井上靖、松前重義など、高専柔道出身の著名人が名を連ねています。井上靖の小説『北の海』は、高専柔道を舞台にした作品として知られています。

戦後は、旧帝大で行われている七帝柔道が高専柔道の流れを汲んでいます。現在では、高専柔道はブラジリアン[[柔術]]の隆盛とともに、その寝技の技術が再評価されています。

主な大会

全国高専柔道大会
全国高商柔道大会
全国高工柔道大会

関連書籍・映像

『北の海』 井上靖
『高専柔道の真髄』 高専柔道技術研究会
『高専柔道』 クエストDVD
* 『平田鼎直伝 高専柔道』 クエストDVD

高専柔道は、独自のルールと歴史の中で寝技技術を磨き上げ、柔道界に多大な影響を与えました。その技術は、今日の格闘技にも受け継がれています。

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