七条新地

七条新地：古都の片隅に咲いた遊廓の記憶

七条新地は、かつて京都市下京区に存在した遊廓です。その歴史は江戸時代中期に遡り、河原の畑地を開墾して煮売り茶屋を開いたのが始まりとされています。時を経て、七条新地は京都を代表する遊廓として発展を遂げました。1958年以降は『五条楽園』と名称を変え、2011年までその灯をともし続けました。

江戸から明治、大正へ：七条新地の隆盛

江戸後期から明治期にかけて、七条新地は京都で最も大きな遊廓として繁栄を極めました。明治時代に入ると、その中心は娼妓へと移り変わり、歓楽街としての色合いを濃くしていきます。大正時代には、三階建ての妓楼が軒を連ねるほどの賑わいを見せ、遊客数では祇園を大きく上回ることもありました。しかし、京都全体の遊興における客単価を比較すると、七条新地は常に最低水準にあり、高級なイメージの祇園とは対照的でした。

七条新地には、娼妓が多数を占め、芸妓は少数でした。昭和初期には芸妓は姿を消し、遊廓としての形態も変化していきました。

鴨川大洪水と第二次世界大戦：時代の波に翻弄されて

1935年（昭和10年）6月29日に発生した鴨川大洪水は、七条新地にも大きな被害をもたらしました。付近一帯の歓楽街とともに、建物の一階部分が浸水するなどの被害を受け、復旧には多大な労力と時間を要しました。その後、第二次世界大戦を経て、社会情勢は大きく変化します。

赤線から五条楽園へ：変容と終焉

第二次世界大戦後、七条新地は赤線地帯へと移行しました。しかし、1958年（昭和33年）の売春防止法施行により、遊廓としての歴史に幕を下ろします。その後は『五条楽園』と名を変え、芸妓を主体とする花街として再出発し、2011年まで営業を続けました。ただし、その一部には、旧来の遊廓時代のサービスを残す側面もありました。

七条新地の歴史は、京都の遊興文化の一面を色濃く反映しています。その隆盛、変容、そして終焉は、時代の流れとともに移り変わる社会の姿を映し出していると言えるでしょう。

参考文献

『京の花街』 渡会恵介著、大陸書房 1977年
『日本花街史』 明田鉄男著、雄山閣、1990年
『京都遊廓見聞録』 田中泰彦編集、京を語る会 1993年
『遊郭をみる』 下川耿史、林宏樹著、筑摩書房 2010年

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