七試水上偵察機

七試水上偵察機について

七試水上偵察機（ななしすいじょうていさつき）は、大日本帝国海軍のために設計された水上偵察機である。本機は愛知航空機により開発されたが、最終的には不採用となり、川西航空機が製作した九四式水上偵察機が制式採用された。この項では愛知航空機の試作機に焦点を当て、その特徴や性能について詳しく述べていく。

機体設計の背景

1932年、海軍が求める長距離水上偵察機の仕様が示され、その要求に応える形で設計が始まった。愛知航空機では三木鉄夫技師が主導し、1933年2月に試作機が完成、この機体は社内で「AB-6」と名付けられた。しかし、性能面において川西の機体には及ばず、最終的には不採用となったことから、試作機は1機のみの生産に止まった。

機体の構造

七試水上偵察機は、愛知の自社開発機「AB-5」をもとにした設計となっており、金属製の骨組みに羽布を張った複葉双フロート機として仕上げられている。審査の過程で、主翼やその他の部分に改修が施され、安定性や操縦性、上昇性能は良好に仕上がっていた。

性能と武装

しかしながら、機体の速力と離着水性能においては課題があり、これが不採用の一因となった。なお、武装も十分とは言えず、全体としての評価は川西機に劣る結果となった。以下にAB-6の諸元を示す。

• - 全長: 10.44 m
• - 全幅: 12.98 m
• - 全高: 4.80 m
• - 主翼面積: 40.61 m²
• - 自重: 1,920 kg
• - 全備重量: 3,020 kg
• - エンジン: 広工廠 九一式 液冷W型12気筒（最大630 hp）×1
• - 最大速度: 225 km/h
• - 巡航速度: 148 km/h
• - 実用上昇限度: 4,850 m
• - 航続時間: 6.9時間
• - 武装: 7.7mm固定機銃 ×1、7.7mm旋回機銃 ×2、30kg爆弾 ×4
• - 乗員: 3名

AB-5の関連

愛知航空機が開発した試作機「AB-5」は、1931年に設計された艇であり、設計はドイツのハインケル社に委託された。AB-5もまた全金属製の骨組みに羽布張りの複葉双フロートで構成されており、当時の他の水上偵察機よりも優れた性能を示した。しかし、海軍に採用されることはなく、AB-6の設計にあたる際の参考としてのみ位置づけられた。

AB-5の諸元

• - 全長: 10.60 m
• - 全幅: 13.50 m
• - 全高: 4.35 m
• - 主翼面積: 52.22 m²
• - 自重: 1,845 kg
• - 全備重量: 3,200 kg
• - エンジン: ロレーヌ クールリス 液冷W型12気筒（最大660 hp）×1
• - 最大速度: 241 km/h
• - 巡航速度: 152 km/h
• - 実用上昇限度: 4,800 m
• - 航続時間: 14時間
• - 武装: 7.7mm固定機銃 ×2、40kg爆弾 ×2
• - 乗員: 3名

結論

七試水上偵察機は、その試作段階での性能の不足から不採用となったが、当時の海軍の要求に応えるべく設計された意義ある機体であった。愛知航空機の試みは、後の水上偵察機の型式開発に影響を与えたと言えるだろう。

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